古代の歯石から判明、聖書に登場するペリシテ人の食事はアジアン

3000年以上前の古代人の遺体から、大豆やターメリックなどアジアの食材

2020.12.25
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古代メギドの市場の想像図。交易商の店先には、地中海東部全域で育つ小麦、キビ、ナツメヤシのほか、南アジアで採れるゴマ油の入ったビンや、ターメリックが盛られた器が並ぶ。(ILLUSTRATION BY NIKOLA NEVENOV)
古代メギドの市場の想像図。交易商の店先には、地中海東部全域で育つ小麦、キビ、ナツメヤシのほか、南アジアで採れるゴマ油の入ったビンや、ターメリックが盛られた器が並ぶ。(ILLUSTRATION BY NIKOLA NEVENOV)
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 新約聖書にある東方の三賢者の物語は、古代の中東において長距離貿易が盛んだったことを示している。このことは学者の間でも定説となっており、ローマ時代には、アラビア海やそれよりも東の地域から、めずらしい油や樹脂が地中海一帯に持ち込まれていた。

 そして今回、学術誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」に掲載された新たな研究で、現在のイスラエルがある土地に住んでいた人々は、アジア産の果物やスパイスを3500年も前から口にしていたことがわかった。(参考記事:「ダビデの敵ゴリアテも、ペリシテ人のルーツを解明」

 研究では、青銅器時代中期から鉄器時代初期(紀元前1500年~1100年頃)の遺体十数体から、化石化した歯垢を採取。分析の結果、バナナ、ターメリック、大豆の痕跡が見つかった。当時こうした作物はどれも、はるか遠くの南アジアで採れるものだった。

 既に古代の地中海文明では、ニワトリ、黒コショウ、バニラなど実に様々な食材が、はるか遠くのインドやインドネシアから輸入されていたことがわかっている。今回の発見は、こうしたことをさらに裏付けるものだ。

「私たちは、古代の人たちが地元で食物を調達し、宝石などの特別な品を遠い土地から輸入していたと考えがちです」。今回の論文の共著者で、ドイツ、ルートヴィヒマクシミリアン大学ミュンヘンの考古学者フィリップ・シュトックハマー氏は続ける。「ところが青銅器時代でさえ、彼らは現代人と同じように、世界各地から食物を輸入していたのです」

歯石は豊かな情報源

 歯石とは、歯の表面に蓄積される歯垢が固くなったものだ。最近まで、歯石は考古学的なサンプルから削り取るべき無駄な部分と考えられてきた。しかし近年の発見は、歯石が実際には豊かな情報源であることを示している。そこには古代のDNAやバクテリアからタンパク質まで、さまざまなものが閉じ込められている。 (参考記事:「5700年前の北欧の女性、ガムに残るDNAを完全解読」

「もしあなたがこの先歯を磨くのをやめたなら、2000年後、わたしはあなたが何を食べていたかを当てることができるでしょう」と、シュトックハマー氏は言う。

参考ギャラリー:ダビデの敵ゴリアテも、ペリシテ人のルーツを解明 写真6点(画像クリックでギャラリーへ)
参考ギャラリー:ダビデの敵ゴリアテも、ペリシテ人のルーツを解明 写真6点(画像クリックでギャラリーへ)
2016年に今日のイスラエル南部にあたるアシュケロンの遺跡で古代ペリシテ人の共同墓地が発見されたのを機に、新しいDNA研究が始まった。

次ページ:古代人の歯石から意外な食物が…

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