オオカミの凍結ミイラを発見、5.7万年前のユーコンに生息

現在のユーコンに暮らすオオカミとは遺伝的に別グループ

2020.12.22
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カナダ北部のユーコン準州の永久凍土から、保存状態のよいオオカミの凍結ミイラが見つかった。(PHOTOGRAPH BY GOVERNMENT OF YUKON)
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 2016年の夏、金採掘者のニール・ラブレス氏がカナダのユーコン準州で思いがけない「お宝」を発見した。永久凍土から姿を現したのは、これまで見つかっている中でもっとも古く、もっとも完全な姿をしたオオカミの凍結ミイラだった。

 古生物学者に調べてもらったところ、オオカミは子どもで、メスだった。今から5万7000年前の更新世、マストドンなどの大型動物が生息していた今のカナダ北西部に暮らしていた。発見されたオオカミの愛称「ジャー」は、このあたりに住む先住民トロンデック・フウェッチンの人々の言葉で「オオカミ」という意味だ。

 更新世(約260万年前から1万1700年前)は、その大半が氷河時代だった。極地の氷床は現在よりもはるかに大きかった。この時代の貴重な動物は、シベリアのツンドラからも見つかっているが、ユーコンでここまで保存状態がよいオオカミが見つかった前例はない。(参考記事:「シベリアで氷河期の絶滅ライオン見つかる」

 ジャーについての論文は、12月21日付の「Current Biology」誌に発表された。「シベリアでは、このような形で動物が永久凍土に保存されることは珍しくありません。しかし、ユーコンやアラスカなど、北米ではあまり一般的ではありません」と、米デモイン大学の古生物学者で、論文の筆頭著者でもあるジュリー・ミーチェン氏は話す。

生後わずか7週間で死んだこのオオカミは、シベリアからベーリング陸橋を渡ってユーコンにやってきたグループに属していたことがわかっている。(PHOTOGRAPH BY GOVERNMENT OF YUKON)
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「すばらしい保存状態です」と、デンマーク、コペンハーゲン大学の古生物学者ロス・バーネット氏も同意する。氏は今回の研究に参加していない。

 ジャーが優れているのは、目に見える部分だけではない。生後7週間で死んだことから何を食べていたかまで、数多くのことがわかるとミーチェン氏は言う。

消えたオオカミたち

 ジャーが生きていたのは、北極の氷河が一時的に後退し、草地が森に変わっていた間氷期だ。この時代には、マストドンやラクダ、ジャイアントビーバー、そしてジャーのようなハイイロオオカミが生息していた。(参考記事:「北米最初の人類に新たな証拠、マストドン狩猟も」

 カナダ、マクマスター大学の古遺伝学者タイラー・マーチー氏は、「捕食者の視点から氷河時代の生態系を見るうえで、肉食動物がここまでの保存状態で見つかるというのは、ほかでは考えられない状況です」と話す。氏は今回の研究に参加していない。

 現在、ハイイロオオカミは北米の荒野の象徴的な存在になっているが、この動物は米大陸で進化してきたわけではない。もともとはユーラシア大陸に登場し、50万年以上前の更新世後期にベーリング陸橋を渡って北米にやってきた。

6万年ほど前のカナダ北西部で子どもと一緒に魚を取ろうとしているハイイロオオカミのイラスト。(ILLUSTRATION BY JULIUS CSOTONYI)
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