ボーンフィッシュが驚きの深さで産卵、浅瀬の魚では前代未聞

深さ138メートルまで潜って急上昇、詳しい産卵行動をはじめて記録

2020.12.23
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バハマ諸島の浅瀬で餌になる甲殻類を探すソトイワシ(ボーンフィッシュ)の仲間(Albula vulpes)。産卵のために深場まで潜るという、浅瀬の魚では前例のない行動を取ることがわかった。(PHOTOGRAPH BY SHANE GROSS)
バハマ諸島の浅瀬で餌になる甲殻類を探すソトイワシ(ボーンフィッシュ)の仲間(Albula vulpes)。産卵のために深場まで潜るという、浅瀬の魚では前例のない行動を取ることがわかった。(PHOTOGRAPH BY SHANE GROSS)
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 ソトイワシ(英名ボーンフィッシュ)を釣るのは簡単ではない。銀色がかった体から「グレーゴースト」とも呼ばれる彼らは、砂底に溶け込むようにして餌を探し、人間に気付くと素早く逃げてしまう。

 ソトイワシ属の多くの種は、世界中の温かく浅い海に生息する。その大物を手にするため、熟練の釣り人たちは、餌となる小エビなどの動きを疑似餌で模倣すべく何年も時間をかける。

「完全に芸術と言っていいものです」と話すのは、米フロリダ・アトランティック大学ハーバー・ブランチ海洋学研究所の魚類生態学者マット・アジェミアン氏だ。実際に疑似餌に食いつくと、ソトイワシは激しく抵抗するという。「全く強烈です。だから、みんな心引かれるんです」

 ゴーストというあだ名が付いたのは、捕らえにくいだけでなく、繁殖行動が謎に包まれているからでもある。カリブ海から西大西洋に生息するソトイワシは、深さわずか1メートルほどの浅瀬にいることが多いが、秋の繁殖期になると、大集合してから沖へ向かい、姿をくらます。彼らがいったいどこに向かうのか、最近まで研究者たちにもよくわからなかった。

 アジェミアン氏と氏が指導する博士課程の学生スティーブ・ロンバルド氏は、Albula vulpesというカリブ海のソトイワシの仲間を、バハマ諸島北部のアバコ諸島近海などで追い続けてきた。数シーズンかけて方法の改良を重ねた末の2019年11月、ソトイワシに追跡装置を取り付け、繁殖行動を追うことに成功した。その成果は驚くべきものだった。

 2020年11月23日付けで学術誌「Marine Biology」に掲載された氏らの論文によれば、アバコ諸島のソトイワシは岸から大陸棚に向かって泳ぎ、その後深さ約138メートルまで潜った。しかも2時間以上にわたって、かなり深い場所にとどまったのだ。

 これは奇妙な行動だ。「沿岸や浅瀬の魚が沖へ出て、そんな深さまで潜って産卵するなんて、今まで全く知られていませんでした」とロンバルド氏は言う。

次ページ:深場への潜水と急上昇

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