ミツバチ、動物の糞でスズメバチを撃退、研究

巣の入り口に糞を塗るとスズメバチが寄り付かない、道具使用を初確認か

2020.12.12
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スズメバチの攻撃を防ぐため、ミツバチは工夫をこらした多様な戦術を編み出してきた。(PHOTOGRAPH BY SATOSHI KURIBAYASHI, MINDEN)
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 東アジアのミツバチは、天敵であるスズメバチの際限のない攻撃を迎え撃たなければならない。スズメバチは集団でミツバチの巣に襲いかかり、まず、遭遇したすべてのミツバチの頭部をかみ切る。それから巣を占領して、ミツバチの幼虫を時間をかけて食べつくすのだ。

 スズメバチから身を守るため、トウヨウミツバチ(Apis cerana)は、進化の過程で工夫をこらした多様な戦術を編み出してきた。侵入者を取り囲んで熱で蒸し殺す「熱殺蜂球」も、そのひとつだ。

 だが、ベトナムで行われた新たな調査では、さらに風変わりな戦術が発見された。巣の入り口に動物の糞を塗るという方法だ。

黒い物体の正体

 この「糞の塗りつけ」は、スズメバチを撃退するだけではない。これはミツバチの道具使用が確認された初めての明確な事例だと、米ウェルズリー大学の昆虫学者ヘザー・マッティラ氏は話す。同氏らによるこの研究は、12月9日付けの学術誌「PLOS ONE」に発表された。

 ベトナムほか東南アジアでは、ミツバチの巣の入り口に黒い斑点がよく見られる。しかし今回の調査が行われるまで、その正体は解明されていなかった。マッティラ氏のチームは、この黒い物体がニワトリや牛など動物の糞であることを突き止めた。さらに、この糞が、スズメバチの仲間Vespa sororを寄せ付けないことも確認した。

「とても驚きました。私たちのチームが今までに手がけた最高の発見のひとつです」とマッティラ氏は言う。今回の調査には、ナショナル ジオグラフィック協会も資金援助している。

 今回の論文には、さらに重要な意義がある。それは、Vespa sororが「殺人スズメバチ」としても知られるオオスズメバチの近縁種だからだ。アジアに生息するオオスズメバチが最近、米国の太平洋岸北西部で発見され、注目を集めている。

 ベトナムのミツバチがスズメバチを撃退する仕組みがわかれば、米国など他の国々におけるミツバチの保護に応用できる可能性があると、マッティラ氏は話す。「それにしても、殺人スズメバチと糞の組み合わせは、かなり印象的ですね」

次ページ:ミツバチが糞を塗り始めた!

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