2020年、オーストラリアと米国西部では山火事が猛威を振るい、中央アメリカとメキシコ湾岸はハリケーンに襲われ、イナゴの大群がアフリカの角を覆い、さらには命にかかわる新たな病気が野生動物の宿主から人間へと感染して、人々の暮らしを根底から覆した。
ただ、つらい一年にも良いことはあった。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるパンデミック(世界的大流行)の猛威がすぐに止まなくても、以下に挙げた確かな可能性が消えることはない。2021年以降の未来に、希望を与えてくれる今年達成された7つの成果とトレンドを紹介していこう。
1■大自然の大勝利
今年、わたしたちが1日の大半を屋内で過ごすうち、自然が、避難場所として、そして娯楽の場として、新しい意味を持つようになった。米議会で7月に「グレート・アメリカン・アウトドア法」が可決されたことは、米国内の国立公園保護が、国民共通の願いであることを思い出させてくれた。国立公園に、これほど多額の資金を費やすことが議会で承認されたのは1950年代以来だ。同法では、将来的な森林、保護区、土地の購入にあてる資金も確保されており、全体としては公有地に100億ドル(日本円で1兆円超)近くの資金が提供されることになる。 (参考記事:「米の歳出強制削減で国立公園運営に暗雲」)
2■電気自動車が大きく加速
ガソリンの代わりに電気で走る、電気自動車。技術の向上や低価格化、さらに政府の補助金などもあって、この10年で徐々に電気自動車は普及してきた。2010年、電気自動車の数は世界中合わせてわずか1万7000台だったが、2019年に推定で720万台となった。ただ、その半分は中国のものだ。英国は先日、2030年までにガソリン車とディーゼル車の新車販売を禁止すると発表し、米カリフォルニア州も2035年を目標に同様の措置をとる(ちなみに、市場規模がずっと小さいノルウェーは、2025年という野心的な目標を掲げている)。 (参考記事:「2020年4月号 未来を探す米国横断EVの旅」)
自動車産業もこうした動きに呼応し、世界最大の自動車メーカーである独フォルクスワーゲンは、今後5年間で環境に配慮した自動車の製造に860億ドル(およそ9兆円)を投じると発表した。ゼネラルモーターズも、電気自動車の製造に数十億ドル(数千億円)を費やす予定だ。アマゾンは、2030年までに配達用電気自動車10万台の配備を発表しており、また米郵政公社も、配送用トラックへの電気自動車の採用を視野に入れている。