先住民マスタナワ族のシュリと妻のジャネット。2017年5月、マロカと呼ばれるシュロ葺き屋根の小屋の前で撮影された。2020年11月11日、この場所でシュリ、もうひとりの妻エレナ、義母マリアの遺体が、矢を射られた状態で発見された。ジャネットは見つかっていないが、おそらくは死亡していると見られる。(PHOTOGRAPH BY CHARLIE HAMILTON JAMES, NATIONAL GEOGRAPHIC)

 南米ペルーのアマゾン地域に暮らす先住民マスタナワ族の一家が惨殺された。地元の部族の間には緊張が走り、当局は事件の真相を探っている。

 シュリ、妻エレナ、義母マリアの遺体は、2020年11月11日、矢を何本も射られた状態で発見された。現場は、彼らが暮らしていたシュロ葺き小屋の焼け跡のそば。近くにはクランハ川が流れている。シュリのもうひとりの妻であるジャネットは見つかっていないが、おそらくは死亡しているものと見られる。(参考記事:「アマゾンの孤立部族の矢で保護団体職員が死亡」

 シュリというのはマスタナワ族としての名前であり、彼は別名エパとも呼ばれていた。女性たちの名前は、キリスト教の宣教師から与えられたものだ。マスタナワは外界と切り離された森の奥深くに暮らす「孤立部族」だ。

マシコ・ピロ先住民保護区の管理所に掲げられた看板の脇に立つシュリ。保護区はペルー文化省の管理下にあり、地元のフニ・クイン族の保護係官が常駐している。シュリとその家族は管理所から徒歩1時間圏内に住んでおり、以前は頻繁に訪ねてきて、食べものや医療の支援を求めていた。(PHOTOGRAPH BY CHARLIE HAMILTON JAMES, NATIONAL GEOGRAPHIC)

 シュリの家族は、孤立部族のために設けられたマシコ・ピロ先住民保護区の境界付近に暮らしていた。国内最大の公園であるアルト・プルス国立公園と敷地が重なり合う保護区内では、アマゾン盆地の中でもとくに手つかずの生態系が保たれている。

 一帯は、世界中のどこよりも孤立部族が密集した地域であり、中でも特に数が多いのは、推定700人からなるペルー最大の孤立部族マシコ・ピロ族だ。

 ペルーの文化省、警察、先住民のリーダーなどから組織される捜査チームは現在、クランハ川周辺で事件の調べを進めている。遺体を発見した、フニ・クイン族の非公式の証言によると、現場では襲撃者50人の裸足の足跡と、マシコ・ピロ族が使うものと同種の矢が見つかっているという。

 マスタナワ族とマシコ・ピロ族は、何世代にもわたって対立を続けてきた。シュリ自身が、前回のマシコ・ピロ族による襲撃の生存者であり、肋骨にはそのときに負った大きな傷があった。

 犯人がもしマシコ・ピロ族であれば、この事件は宿敵による襲撃の一環なのかもしれないし、あるいは残り少なくなった自分たちのテリトリーや食料を守るための行動だったのかもしれない。(参考記事:「「非接触部族」マシコ・ピロ族、頻繁に出没の謎」

クランハ川の上流。ペルーのアルト・プルス国立公園と、それに重なるマシコ・ピロ先住民保護区を流れる。この地域はアマゾンの中でも特に孤立部族が密集している場所の一つ。(PHOTOGRAPH BY CHARLIE HAMILTON JAMES, NATIONAL GEOGRAPHIC)

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