ケニアのマサイ・マラ国立保護区では、パンデミックが始まって以来観光客を相手に文化を紹介するパフォーマーたちの仕事が減少した。国は、2020年8月1日から外国人観光客の受け入れを再開している。(PHOTOGRAPH BY TONY KARUMBA, AFP/GETTY IMAGES)
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 米国やフランス、ドイツで新型コロナウイルス感染症が猛威を振るっている。冬を目前にして、感染拡大を抑えるために再びロックダウン(都市封鎖)に入る国もある。その一方で、ウイルスが蔓延している国からの観光客を受け入れ始めている場所がある。なぜなのだろう?(参考記事:「研究室 「コロナ禍」はいつまで続く?:2022年終息説ほかいくつかのシナリオ」

 米国のレストランやバーが、経済的理由で飲食の提供再開を余儀なくされているのと同様に、エジプトやコスタリカなど観光収入をあてにしている国では、国境を閉ざしたままでは経済そのものが立ち行かないのだ。

 こうした国では、国民の生命を守りながら、いかに外貨を獲得するかという難しい問題に、人々が頭を抱えている。現在、リスクと利益のバランスを取りながら、外国人観光客の受け入れを再開した人気の観光地をいくつか挙げてみよう。

観光に依存する経済

 世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)によると、観光産業は2019年に3億3000万もの人を雇用していた。これは、全就業者の約10人に1人が、この業界で働いていた計算になる。ところが、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)によりそのうち約1億2100万人の職が失われると、WTTCは推測している。GDPの14%近くを観光業が占めるカリブ海諸国などでは、新型コロナによる国境封鎖で、とりわけ深刻な痛みを経験している。米コーネル大学ホテル経営学部教授のスティーブ・カーベル氏によると、カリブ海地域のほとんどの国では、外国人観光客の80~90%が北米からの旅行者だという。(参考記事:「コロナウイルスに感染しにくい機内の座席は? 研究」

 国境を開放することによる経済的効果は明らかだが、各国がどのような考えに基づいて再開に踏み切ったのかまでははっきりしない。「決定は政府の裁量に委ねられています」と話すのは、米国のツアー会社スコット・ダンUSAの社長ジョン・スペンス氏だ。「科学的アドバイスに基づいていると思いたいですが、国内の観光業界から相当の圧力がかかっているはずです」(参考記事:「2020年11月号 それでも科学を信じる(新型コロナで変わる世界)」

 新型コロナ関連の規制やリスクに関する最新情報を得ることは、旅行会社にとって不可欠な重要業務だ――こう考えたスペンス氏は、情報収集専門の正社員を雇った。旅行プランの旅先に選定すべき国かどうかを判断するために、米国務省からの最新情報や、現地の米大使館ウェブサイト、英国政府による渡航情報、WTTC、その他の情報源を常に確認している。

国境を閉鎖しなかった国々

 経済に占める観光産業の割合が著しく高い国には、コロナ下にあって一度も国境を閉鎖していない国もある。その1つがメキシコだ。メキシコでは、陸路での国境越えを一部制限してはいるものの、基本的に米国からの入国に制限を設けていない。また、入国時に詳しい検疫もなく、到着時に検温を求められるくらいだ。在メキシコ米国大使館は、ソーシャルディスタンスや手指消毒など基本的な情報をウェブサイトに掲載する以外は特に対応策をとっていない。

参考ギャラリー:いつか訪れたい! カリブ海の絶景 24選(画像クリックでギャラリーへ)
白く柔らかい砂、きらめく波、風に吹きさらされたフォフォティの木が有名な島、アルバのイーグル・ビーチ。(PHOTOGRAPH BY MONICA GUMM, LAIF/REDUX)

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