実は絶滅危惧種のイチョウ、こうして生き延びた

「生きている化石」の希有な歴史、生き残った背景に人間との共存があった

2020.12.03
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最後の一種

 現在の地球には、5つのタイプの種子植物がある。もっとも多いのが被子植物。そして、マツ類、グネツム類、ソテツ類があり、イチョウ類がある。植物界においてイチョウのグループ(綱)には、ただ一種、イチョウ(Ginkgo biloba)しか現存しない。

 太古の世界には、さまざまな種のイチョウが存在していたと考えられる。中国中部の炭鉱で見つかった1億7000万年前の植物の化石は、葉の形と種子の数が微妙に異なるが、イチョウによく似た姿をしている。

イチョウの葉を並べて撮影したもの。秋に鮮やかに色づくまで、葉は明るい緑色をしている。(PHOTOGRAPH BY DARLYNE A. MURAWSKI, NAT GEO IMAGE COLLECTION)
イチョウの葉を並べて撮影したもの。秋に鮮やかに色づくまで、葉は明るい緑色をしている。(PHOTOGRAPH BY DARLYNE A. MURAWSKI, NAT GEO IMAGE COLLECTION)
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 イチョウは、カブトガニなどと同じように「生きている化石」と呼ばれることが多い。はるか昔にはさまざまな種が存在していたグループの生き残りだからだ。(参考記事:「「生きた化石」カブトガニ なんとクモの仲間だった」

 一説によると、世界中でイチョウが死滅を始めたのは1億3000万年前ごろのこと。被子植物が多様化し、広がり始めた時期だ。現在は、23万5000種以上の被子植物が存在する。被子植物は進化や繁殖、成長が早く、果実や花弁があるため、植物食動物や授粉者にとってイチョウよりも魅力的だ。

「イチョウは、新しい植物との競争の中で、隅に追いやられたのでしょう」とクレイン氏は言う。

 新生代になると、6600万年前ごろに始まった寒冷化とともに、イチョウは北米やヨーロッパから姿を消し始める。1万1000年前に最終氷期が終わったとき、イチョウは中国にしか残っていなかった。

絶滅の危機から復活

 イチョウの木は強烈な臭いを持つことで知られている。メスの木は種子を作るが、その種子は酪酸を含む肉質外層に包まれている。酪酸は、人間の嘔吐物の特徴的な臭いでもある。

 では、なぜ進化の中でこのような悪臭を身につけたのだろうか。クレイン氏はこう話す。「私の想像では、臭いの強いものを好む動物に食べられることを狙ったのです。そして、その動物の内臓を抜けて発芽するのです」

次ページ:人間が栽培し、イチョウは生き延びた

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