クランベリー農家らに危機感、忍び寄る温暖化の足音

寒冷な気候を活かした栽培方法に影響じわり、米マサチューセッツ州

2020.12.01
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2020年10月、米国マサチューセッツ州カーバーのエッジウッド・ボグ(畑)で、ベルトコンベアからトラックの荷台に落とされるクランベリー。感謝祭の食卓を彩る真紅の果実を収穫するため、クランベリー農家の人々は冷たい水をはった畑に入る。(PHOTOGRAPH BY JOHN TLUMACKI, THE BOSTON GLOBE, GETTY IMAGES)
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 エルドリッジ一家が5年前に米マサチューセッツ州ケープコッドの小さな町にあるクランベリー畑を購入したとき、手入れが簡単ではないことはわかっていた。だが、覚悟はできていた。

 彼らはクランベリーに絡みつく毒性の強いツタウルシを抜き、水をはった畑ではクランベリーを集める熊手を這い上がってくる蜘蛛を追い払った。寒い夜には、果実を凍らせないためのスプリンクラーをいつでも操作できるよう、畑の横にとめたトラックの中で寝た。

 それでも毎年秋の収穫の喜びを思えば、苦労する価値は十分ある、とオーナーの妻のタバサ・エルドリッジさんは言う。水面に浮く赤褐色の葉、タンニンを含む冷たい水、彼女の夫と息子が水面をかき分け、ぷかぷかと浮かぶ果実を優しく集めていく。クランベリー農家の醍醐味だ。(参考記事:「ウィスコンシンのクランベリー畑」

 しかし、クランベリーの将来は不確かだ。米国北東部のニューイングランド地方では、ほかの地域と同様に、気候変動の影響でクランベリーの生育条件の多くが昔とは変わってきている。こうした変化はクランベリーの成長を困難にし、その将来に疑問符をつけている。

 クランベリーを愛する農家と彼らを支援する科学者は、解決策を見つけようと努力しているし、状況はまだそれほど深刻ではない。しかし、実践的な解決策はまだ見つかっていない。

マサチューセッツ州のクランベリー畑の公式な地図は存在しないため、デカルトラボ(Descartes Labs)は、地球観測衛星センチネル1の2018年のデータを用いてAIにより湿地の位置を特定し、地図を作成した。クランベリー畑の可能性が高い地域が赤色で強調されている。
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厳しい気候に適応した果実

 北米原産のクランベリー(オオミノツルコケモモ)は高さ10〜20センチほどのつる性の常緑樹で、東海岸の各地で古くから先住民により食料をはじめ、染料や薬としても用いられてきた。その後、ヨーロッパ人が北米に進出すると、クランベリーを日常的に食べることが、ビタミンC 不足で起こる船乗りの壊血病の予防になることに気づいた。(参考記事:「先住民が重宝した、クランベリーの歴史」「大航海時代の船乗りを震え上がらせた壊血病」

 今日では、マサチューセッツ州はウィスコンシン州に次いで全米第2位のクランベリー生産地となっており、生産量は年間10万トン以上にのぼる。

 両州におけるクランベリーの主な生産地は、氷河が硬い岩盤を削ってできたくぼみだ。氷河が後退すると、このくぼみは湿気が多く、植物が豊かで、砂質で、酸性の湿地帯となった。湿地の端にはクランベリーが繁茂し、豊富な水と、厳しい冬と、穏やかな夏に適応していった。

 クランベリーの種子を運ぶのは風や野生動物ではない。水だ。果実が熟してつるから水中に落ちると、浮いた実は湿地の縁まで漂っていき、そこに定着する。

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