新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界を席巻する中、人々の注目はとかく、100万人を超えた人間の死者数に集まりがちだ。しかし専門家らは、人間に最も近縁な動物たちもまた、COVID-19の原因である新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の危険にさらされていると警告する。
鳥類、魚類、両生類、は虫類、哺乳類を含む脊椎動物400種以上を分析した研究によると、近絶滅(Critically Endangered)の状態にあるキタホオジロテナガザル、スマトラオランウータン、ニシローランドゴリラなどの霊長類、また絶滅危惧種(Endangered)のチンパンジーやボノボは、人間と遺伝子的に似ていることが原因で、新型コロナウイルスに特に感染しやすいと考えられるという。
9月8日付けの学術誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」に発表されたこの研究を主導したハリス・ルイン氏は当初、コロナウイルスの宿主を特定したいと考えていた。SARS-CoV-2は、中国原生のコウモリから別種の動物(1種以上の可能性もある)を経由して、人間にも感染するようになったと考えられている。
しかし調査を進めるうちに、研究データからは、人間こそが媒介者として野生動物に病気を広げる可能性が見えてきた。
「絶滅の危機にある霊長類の間で新型コロナ感染症のような病気が流行する可能性は、飼育下と野生の両方で非常に高いと言えます」。米カリフォルニア大学デービス校の進化生態学部の特別教授であるルイン氏はそう語る。
こうした懸念は、飼育下にある希少動物にとってはとりわけ深刻だ。今年4月には、米ニューヨーク市ブロンクス動物園のライオンとトラ計8頭が新型コロナウイルスに感染している。ルイン氏によると、ライオンたちは人間の飼育員からウイルスをもらったと考えられるという。(参考記事:「トラが新型コロナウイルスに感染、ペット以外で初」)
感染している人間は、アフリカの一部など、野生動物と人間との距離が近い場所へウイルスを運んでしまう可能性があると、ルイン氏は警告する。
おすすめ関連書籍
絶滅から動物を守る撮影プロジェクト
今まさに、地球から消えた動物がいるかもしれない。「フォト・アーク」シリーズ第3弾写真集。 〔日本版25周年記念出版〕 〔全国学校図書館協議会選定図書〕
定価:本体3,600円+税