人種問題を議論する拠点に、米国グリーンウッド歴史地区

「いつか訪れたい旅先25 2021年版 再び旅立つ日を信じて」第5回

2021.01.02
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
2018年6月、米タルサ市グリーンウッド地区。“ブラック・ウォールストリート(黒人のウォール街)”を描いたグラフィティがお披露目となり、人々が集まる。かつて黒人経営のビジネスが栄え、人種差別的暴力により壊滅したこの地区は今、文化的、経済的に蘇ろうとしている。(PHOTOGRAPH BY SHANE BEVEL)
2018年6月、米タルサ市グリーンウッド地区。“ブラック・ウォールストリート(黒人のウォール街)”を描いたグラフィティがお披露目となり、人々が集まる。かつて黒人経営のビジネスが栄え、人種差別的暴力により壊滅したこの地区は今、文化的、経済的に蘇ろうとしている。(PHOTOGRAPH BY SHANE BEVEL)

「グリーンウッド・ライジング」。米国オクラホマ州タルサ市に新しくできる“ブラック・ウォールストリート(黒人のウォール街)”歴史センターの呼び名だ。ここグリーンウッド歴史地区は、米国史における最も残虐な人種差別的暴力の現場となった場所だ。この地の社会経済の変革を支えていこうという大きなうねりを、グリーンウッド・ライジングという名前は正しく表している。

 1921年5月31日、繁栄していたグリーンウッド地区を白人テロリスト集団が襲った。襲撃は18時間に及び、300人の黒人の移住者が殺害され、黒人所有の住宅や店舗が軒を連ねた35近くの区画が破壊された。

 この事件から100年が経とうとしている今、かつて活気に満ちていたコミュニティの歴史を伝えるため、「1921年タルサ人種差別虐殺100周年委員会」が、前述のグリーンウッド・ライジングを建設している(2021年秋開館予定)。1年を通し、講演者を招いたり、コンサートを開催したりと、さまざまなイベントを行う予定だ。

 この歴史センターの目的は、グリーンウッド地区を蘇らせるための、そして米国中のシステム的な人種差別に対峙しそれを終わらせるための、触媒となることだ。100周年委員会のプロジェクト・ディレクターであるフィル・アームストロング氏はそう話す。

「タルサで、そして米国中で、私たちはこんなものじゃないはずだ、もっと良い人間であるはずだ、との想いが広がっています」と、アームストロング氏は語る。「グリーンウッド・ライジングは、人種差別によるトラウマや和解に関する議論を継続していくための出発点となります。歴史地区全体が、自分たちの中にある差別を認識し、身の回りで真の変化を起こしていくための学びの場となるのです」

ギャラリー:いつか訪れたい旅先25 2021年版 再び旅立つ日を信じて(画像クリックでギャラリーページへ)
ギャラリー:いつか訪れたい旅先25 2021年版 再び旅立つ日を信じて(画像クリックでギャラリーページへ)
アロニソス島、ギリシャ 21/25
(PHOTOGRAPH BY ELENA BECATOROS, AP)

関連記事:
生まれ変わった映画「ロッキー」の街、米国フィラデルフィア
幻のセコイア州の歴史、米国先住民の権利ふたたび
苦しみの歴史に衝撃、アフリカ系米国人博物館

※「いつか訪れたい旅先25 2021年版 再び旅立つ日を信じて」ほか、旅の記事は「旅・文化の記事一覧」でまとめてご覧いただけます。

米国オクラホマ州タルサ市のグリーンウッド歴史地区はかつて米国史上最も残虐な人種差別暴力の現場となった場所ですが、歴史を伝え、人種差別撤廃に向けた取り組みを始めている。

会員向け記事を春の登録キャンペーンで開放中です。
会員登録(無料で、最新記事などメールでお届けします。

会員登録(無料)のメリット

  • 1ナショジオ日本版Webの
    無料会員向け記事が読める
  • 2美しい写真と記事を
    メールマガジンでお届け

文=NATIONAL GEOGRAPHIC STAFF/訳=桜木敬子

おすすめ関連書籍

逆境だらけの人類史

英雄たちのあっぱれな決断

窮地に陥ったり、不遇や失敗にまみれたりした人たちが、劇的な逆転を遂げるに至る決断を47例集めた、歴史読み物。

定価:2,860円(税込)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加