時代を築いた巨大望遠鏡が解体へ、破損相次ぎ、プエルトリコ

アレシボ天文台、重力波や小惑星探知に貢献、プエルトリコの誇り

2020.11.24
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アレシボ天文台のパラボラアンテナの上空。受信機を吊るすケーブルをチェックする技術者のルイス・エレディア氏。1989年撮影。(PHOTOGRAPH BY ROGER RESSMEYER/CORBIS/VCG VIA GETTY IMAGES)
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 57年前に建設され、数々の功績を残してきた巨大望遠鏡が、その使命を終える。

 米国立科学財団(NSF)は11月19日、カリブ海の米自治領プエルトリコにある、アレシボ天文台の電波望遠鏡の運用を廃止すると発表した。崩壊の恐れがあるため、望遠鏡を解体する予定という。

「子どもの頃、アレシボ天文台に触発されて天文の道を志した人間として、これは衝撃的な決定で、心が張り裂けそうです。この天文台が今日まで、どれほどプエルトリコの励みになってきたかを、私は見てきました」と、米テキサス州にある月惑星研究所(LPI)のエドガード・リベラ=バレンティン氏は、ナショナル ジオグラフィックへのメールに書いている。

試練の数カ月

 アレシボ天文台にとっては試練の数カ月だった。今回の決定は、その末に出されたものだ。

 この巨大望遠鏡は、直径305メートルの巨大パラボラアンテナで反射した電波を上空に吊るした受信機でとらえる仕組み。ところが2020年8月以降、上空の900トンにもなる受信プラットフォームを吊り下げているケーブル2本が切れてしまった。

 技術チームは望遠鏡を安定運用しようと努力してきたものの、その他のケーブルにも強度の低下や劣化の兆候が見られ、場合によってはプラットフォームが落下して約140メートル下のパラボラアンテナを突き破るかもしれないとの懸念が高まっていた。そして今回、NSFは修復を断念し、望遠鏡の運用廃止を決定した。

「望遠鏡は大惨事を引き起こす恐れがあります」とNSFは11月19日の声明で述べた。「いかなる修復の試みも、作業員の生命を危険にさらす可能性があります」

 アレシボ天文台の望遠鏡は1960年代初頭に建設され、プエルトリコの人々の誇りの源となってきた。太陽系外のものと初めて確認された惑星を発見するなど、科学的にも重要な役割を果たしてきた。また、重力波がパルサーと呼ばれる天体から放出されていることを証明し、この成果は1993年のノーベル物理学賞に輝いた。さらに、アレシボ天文台の望遠鏡は強力なレーダーとして、地球軌道に飛来する小惑星の探知にも役立ってきた。(参考記事:「2度目の重力波観測、天文学はいよいよ新時代へ」

次ページ:「とにかく悲しいという気持ちです」

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