有効率94.5%、モデルナ社のワクチン候補、驚きの理由

冷蔵庫で1カ月保存可能、接種グループの重症患者はゼロの暫定結果

2020.11.19
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秘密は特許技術にあり?

 ロタウイルスやHPV(ヒトパピローマウイルス)用など、この10年間にいくつかの新たなワクチンが入手可能になり、多くの国がその大量な物流について貴重な経験を積んできた。ワクチンを供給するには、メーカーから輸送し、いったん拠点に保管して、冷蔵機能を持つトラックやオートバイで国や地域に分配しなければならない。

 モデルナのワクチンが普通の冷蔵庫で長く保存できるのは、科学者たちが安定性を保つ方法を考え出したおかげだ。

 米アイオワ大学の薬学部長アリアスガー・K・サレム氏によれば、秘密は“脂質ナノ粒子の戦略的な配合”だという。脂質ナノ粒子はワクチンの構造を支えるもので、人の細胞内に薬物を輸送する役割も果たす。モデルナの技術は特許で保護されているため詳細は不明だが、RSウイルスをはじめ、同社ではほかのウイルスのワクチンにも脂質ナノ粒子を使用しており、新型コロナウイルスワクチンに応用した可能性が高いとサレム氏は推測している。

 ワクチンの安定性を高める方法はほかにもある。ワクチンを保存する液体に防腐剤を添加したり、時間経過や高温によるRNA鎖の劣化を防ぐため、脂質ナノ粒子の構造を微調整したりなどの手法だ。

複数種のワクチンが必要になる可能性も

 このように普通の冷蔵庫で輸送、保存できるという利点はあるものの、モデルナのワクチンが勝者だと決めるのはまだ早い。人口統計学的な条件によって、ワクチンの効果が変化する可能性はある。つまり、現時点の最有力候補の両方が必要になることもあり得る。

「ワクチンの種類が、利用可能なサプライチェーンとワクチン接種を受ける人々に合っていることが極めて重要です」とリー氏は話す。例えば、ワクチンを届けるのが難しい人々(あるいは、2度の接種の2度目を受けない可能性がある人々)の場合、1度の接種で済み、効き目が長いワクチンを使った方が賢明かもしれない。(参考記事:「新型コロナワクチン、社会的弱者を優先すべき理由」

 既存の冷蔵設備を活用するにしても、簡単にワクチンを供給できるわけではなさそうだ。ドイツの物流企業DHLは9月、たとえ普通の冷蔵庫を利用できたとしても、新型コロナウイルスワクチンに必要なコールドチェーン(低温物流)による供給を受けられない人が全世界で30億人に達するという試算を出している。

 政府や公衆衛生当局がこれほど迅速かつ大規模な行動を迫られた前例がないことを考えると、サプライチェーンに遅れる部分が生じるのは不可避だとリー氏も述べている。「ある場所ではファイザーのワクチンが合っていて、ほかの場所ではモデルナのワクチンが合っているという状況になるかもしれません。しかも、開発中のワクチンはほかにもあります」

次ページ:治験参加者の約10分の1に副反応も

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