14年間隠されていた「決闘する恐竜」化石、ついに表舞台へ

組み合うティラノサウルスとトリケラトプス、謎は解明されるか

2020.11.20
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「しっかりとした博物館に買い取られたことは良かったと思います。スタンの時のように化石がどこかに消えてしまったわけではありませんから。ですが、博物館はこれにいくら支払ったのでしょうか。この取引によって、科学者や博物館は商業的な化石取引に手を貸すようになったのか、と言われてしまいそうです」

 カー氏によると、現在知られているティラノサウルス・レックスの化石のうち、およそ半数に当たる40体以上を民間や営利団体が所有しており、科学的研究は行われていないという。

今後の研究で解明したいことは

「決闘する恐竜」を晴れて手に入れた博物館では、ザンノ氏とその研究チームによる今後の研究に期待がかかる。2頭の恐竜は本当に戦いながら死んだのかという疑問も、明らかにされるだろう。

 さらにザンノ氏のチームは、化石の発掘現場を訪れて、化石がどのように形成されたかを調査する許可も手に入れた。「実際に現場へ行って、そのデータを自分たちで集めることができなければ、化石の科学的な価値は大きく下がってしまうでしょう」と、ザンノ氏は言う。

 恐竜が実際に戦っていたかどうかはともかく、2体の恐竜はどちらも驚くほど保存状態が良い。

特集ギャラリー:アップデートされる恐竜(2020年10月号)
解析技術の飛躍的な進歩と化石の発掘ラッシュで、恐竜研究の最前線では今、新発見が相次いでいる。皮膚や羽毛の色から子育ての方法、生態や進化の道筋まで、恐竜像が大きく塗り替えられようとしている。(写真=パオロ・ベルゾーネ)

 このティラノサウルス類の化石は、ティラノサウルス・レックスの子どもだと考えられている。だとすると、卵からかえったあと獰猛な捕食恐竜へ成長するまでの過程を研究する貴重な資料となる。子どものティラノサウルス・レックスの化石は、まだほとんど発見されていないからだ。(参考記事:「孵化前のティラノサウルス類の化石を発見、初」

 しかも、この化石は骨格がほぼ完璧にそろっている。フィップス氏は、これはティラノサウルス類の小型恐竜ナノティラヌスだと主張するが、多くの専門家は、ナノティラヌスはティラノサウルス・レックスの子どもであると考えている。(参考記事:「論争中の恐竜、実は若いティラノサウルスだった」

 骨を覆っている岩石にも、多くの秘密が隠されている。恐竜の皮膚の跡や、恐竜の軟組織が分解したものと思われる残留物も見つかっている。古生物学の目覚ましい発展により、将来は、胃の内容物や生きていた頃のたんぱく質の痕跡までもが発見されるかもしれない。

 フィップス氏は、事態が一件落着したことに安堵し、近いうちにノースカロライナ州を訪問したいと話している。

文=MICHAEL GRESHKO/訳=ルーバー荒井ハンナ

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