ストーンヘンジに地下トンネル計画、英政府が承認、賛否両論

賛成派「景観取り戻される」反対派「遺跡に取り返しのつかないダメージ」

2020.11.16
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英国政府は、世界遺産ストーンヘンジの近くを通る交通渋滞がひどい道路を、トンネルを掘って地下に移設すると発表した。 (PHOTOGRAPH BY STEVE PARSONS, PA IMAGES/GETTY)
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 英国政府がストーンヘンジの世界遺産登録エリアの地下に、4車線のトンネルを建設する計画を承認したことで、論争が巻き起こっている。

 現在ストーンヘンジのそばを走るハイウエーA303は、道幅が狭くて交通渋滞がひどいことで悪名高い。そこで総工費22億ドル(約2300億円)の改善計画が進んでいるが、問題となっているのはこの計画の一部である長さ3.2キロのトンネルだ。

 このトンネルは、考古学者や環境保護活動家、そしてストーンヘンジを崇める人々から強い反対があったにもかかわらず、承認された。賛成派は、トンネルにより本来の景観を取り戻し、年間160万人を超える観光客がより良い体験ができるようになると主張する。(参考記事:「ミステリーサークルはなぜ人を虜にするのか 写真25点」

「観光客は、すぐそばを走るトラックの大渋滞を見ることなく、ストーンヘンジのあるべき姿を味わえるようになります」と話すのは、ストーンヘンジをはじめ、英国の400以上の史跡を管理する慈善団体「イングリッシュ・ヘリテージ」のキュレーター長アンナ・イービス氏だ。

「ストーンヘンジは、単なるストーンサークル以上のものであり、1つの景観なのです。人々はそれを忘れているか、気づいていません」と同氏は言う。「トンネルの建設により、ここは再び散策に適した場所になるでしょう。例えば、南から近づく際に、命懸けでハイウエーを横断しなくてもよくなります」

 一方、反対派はこのトンネル・プロジェクトが、まだ解明途中の古代遺跡に取り返しのつかないダメージを与える恐れがあると主張している。2020年6月には、ストーンヘンジの近くで、巨大な円周上に配置された20本の深い縦穴が発見され、これを調査する間、政府はトンネル・プロジェクトの決定を4カ月延期することを余儀なくされた。

「リモートセンシング(センサーによって遠隔でものを調べる技術)は、考古学に革命をもたらしました。そのおかげで、古代の景観に対する我々の理解が、変わりつつあります。よく知っていると思っていたストーンヘンジでさえもです」と、この思いも寄らぬ縦穴を発見した「ストーンヘンジ隠された景観プロジェクト」の共同リーダーを務める英ブラッドフォード大学の景観考古学者ビンス・ガフニー氏は話す。「あそこにこんなものがあるとは、誰も考えていませんでした。この他にも何があるか、誰にもわからないでしょう?」

参考ギャラリー:巨石遺跡から修道院まで、石造りの聖地22選(画像クリックでギャラリーへ)
アイルランド、ケリー州沖に浮かぶ島に、石積みの僧房が残る。6~8世紀、苦行を求める修道僧が神との結びつきを強めようと、修道院を出てここへやって来た。(PHOTOGRAPH BY HARTMUT KRINITZ, LAIF/REDUX)

次ページ:「こんな風に世界遺産を掘り返すべきではありません」

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