木星の衛星エウロパはどうやら、闇の中で光を放っているらしい。
「エウロパの上に立ってあたりを眺めたなら、まるで素敵なおとぎ話の世界にいるような気分になるでしょう」と、NASAジェット推進研究所の天体物理学者マーシー・ガディパティ氏は語る。氏は、11月9日付の学術誌「Nature Astronomy」にエウロパが放つ光に関する論文を発表した。
エウロパは、月と同じように、太陽に向いた面が明るく輝き、反対の面は暗闇に覆われている。月が満ち欠けして見えるのはそのせいだ。しかし今回、新たな実験によって、エウロパの裏側が緑色や青みを帯びた白色の光を放っている可能性があることがわかった。原因は、エウロパ表面の氷が、木星の強力な磁場から絶え間なく放射線を浴びていることだ。
ガディパティ氏の研究チームは、エウロパ表面にあると考えられているいくつかの化合物を含んだ氷を使って実験を行い、物質の構成によって放たれる光の色が影響を受けることを発見した。
これはつまり、将来の探査でエウロパ表面の光を調べることができれば、エウロパ表面の複雑な化学的性質を解明しうることを意味する。そうした研究からはまた、エウロパの氷地殻の下に存在すると考えられている海(生命が存在する可能性がある)の組成について、手がかりが得られるかもしれない。
この先数年以内に、地球から二つの探査機が打ち上げられ、エウロパを間近に観測することが予定されている。ひとつはNASAの探査機エウロパ・クリッパー、もうひとつは欧州宇宙機関(ESA)の木星氷衛星探査計画(JUICE)だ。今回の新たな論文は、これからエウロパを研究する科学者たちの「ツールボックスに、新たな道具を加えてくれます」と、エウロパ・クリッパー計画の科学者カート・ニーバー氏は言う。
物質次第で光の色や強さが変わる
純水の氷が放射線にさらされると光を放つことは、1950年代から知られていたと、独ベルク大学ヴッパータールの宇宙粒子物理学者アナ・ポルマン氏は言う。高エネルギーの電子線(放射線)が氷の分子に衝突すると、いったん励起した分子が光のかたちでエネルギーを放出する。
今回の研究の査読者を務めたポルマン氏は、南極の氷の中に見られるこのかすかな光の瞬きを利用して、地球に降り注いでいると考えられているエキゾチック粒子を探している。しかし、地球の分厚い大気と磁気圏が宇宙から入ってくる放射線の多くを遮断するため、そうした分子の輝きは非常にわずかしか起こらない。
おすすめ関連書籍
世界があこがれた空の地図
美しく奇抜な発想があふれる驚異の芸術。ベストセラー第3弾! 〔全国学校図書館協議会選定図書〕
定価:2,970円(税込)