フカヒレ取引の拠点であるシンガポールで販売されているさまざまなフカヒレ。(PHOTOGRAPHS BY FEDERICO BORELLA)
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切り取られたサメの尾とヒレ。インドネシア、タンジュンルアーの魚市場で撮影。 (PHOTOGRAPHS BY FEDERICO BORELLA)
切り取られたサメの尾とヒレ。インドネシア、タンジュンルアーの魚市場で撮影。 (PHOTOGRAPHS BY FEDERICO BORELLA)
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 また研究チームは香港、カナダのバンクーバー、米国のサンフランシスコ、ブラジル北岸の市場で5000以上のフカヒレを実際に入手して調べた。これらの試料が全世界のフカヒレ取引を表すものではないと前置きしたうえで、試料にしたフカヒレの大部分が、特定の国のEEZで漁獲したサメから採取されたものだと報告した。サメの漁場として知られるインドネシア、日本、メキシコなどは当然含まれていたが、意外なことに、オーストラリアとブラジルのサメも見つかった。

 米フロリダ国際大学の博士研究員ディエゴ・カルデニョーサ氏は第三者の立場で、外洋に暮らすサメだけでなく沿岸の種も脅威にさらされているという認識が高まっているが、今回の研究結果はそれを裏づけるものだと述べている。また、フカヒレ取引が世界規模で行われていることも明確になった。 (参考記事:「フカヒレに使われるアオザメ、国際取引規制対象に」

 カルデニョーサ氏は絶滅の危機にさらされているサメの遺伝子特性を研究し、その成果を発表している。氏はメールでの取材に対し、同氏の研究に加えて今回の論文によって、「世界各地で、漁業管理の強化が必要だということがはっきりしました」と述べた。

「アジアの市場では、CITES(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)のリストに登録されているサメのヒレが取引されていますが、間違いなく、太平洋東部(メキシコ)が主な供給源です」(編注:CITESは野生動植物の国際取引を規制する条約で、ワシントン条約として知られる。国際取引の規制を厳格化し、個体数の減少を食い止めなければならない種がリストに登録されている)

 EEZで漁獲されているサメが多いという今回の研究結果は、ある意味、公海の漁業より、追跡・管理が容易かもしれないという希望を与えてくれる。だが一方で、公海で操業する漁船と比べて沿岸部の船は小さく数も多い。その意味では追跡は難しく、むしろ悪影響は大きいかもしれない。

 保護団体のシャーク・アドボケイツ・インターナショナルの代表を務めるソーニャ・フォーダム氏はメールでの取材に、「今回の研究は、自然保護団体が考慮すべき重要な事柄を強調しています。小規模漁業がサメの個体数に重大な影響を与える可能性があることです。持続可能性を実現するには、国別の対策と国際的な対策の両方が必要です」と述べた。 (参考記事:「米国が違法フカヒレの一大中継地になっている」

 つまりサメ保護で、最大の障害は以前と何ら変わっておらず、サメ漁を持続可能なレベルに制限する政治的な意思が必要だとフォーダム氏は指摘する。「科学と予防的アプローチに基づく具体的な制限、そして、説明責任。こうしたことを政策を決める人々に要求するためにも、もっと声を上げていかなければなりません」

インドネシア、タンジュンルアーの魚市場で、従業員や売り手、買い手が競りの開始を待っている。サメは漁船ごとに並べられている。(PHOTOGRAPHS BY FEDERICO BORELLA)
インドネシア、タンジュンルアーの魚市場で、従業員や売り手、買い手が競りの開始を待っている。サメは漁船ごとに並べられている。(PHOTOGRAPHS BY FEDERICO BORELLA)
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文=DAVID SHIFFMAN/写真=FEDERICO BORELLA/訳=米井香織