ILLUSTRATIONS BY CHRISTOPHER TURNER
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 米国の大統領選挙が目前に迫っている。共和党の候補ドナルド・トランプ現大統領と、民主党の候補ジョー・バイデン前副大統領が掲げる政策は、真っ向から対立している。なかでも、エネルギーと環境問題に関する立場では、両候補の間にはかなりの開きがある。

 そこで、就任以来トランプ氏が大統領として行ってきた政策と、バイデン氏が掲げる環境に関連する政策を比較してみたい。

化石燃料のインフラと規制

パイプライン計画
トランプ氏:キーストーンXLとダコタアクセスパイプラインを支持。
バイデン氏:キーストーンXLの停止を約束。ダコタアクセスに関しては立場を表明していない。

化石燃料への政府による支援
トランプ氏:化石燃料産業の成長を妨げない。
バイデン氏:化石燃料への補助金制度廃止を支持。

石油規制
トランプ氏:オバマ前大統領時代のメタン排出規制を廃止。無制限のフラッキング(水圧破砕法による石油・天然ガスの採掘)を支持。
バイデン氏:フラッキングは禁止しないが、海洋油田と公有地での新規採掘は禁じる。

石炭
トランプ氏:石炭生産を制限する規制を緩和・廃止した。
バイデン氏:安価な再生可能エネルギーによって新たな石炭火力発電への需要はなくなったと発言。

トランプ氏:
 オバマ政権が却下したキーストーンXLパイプラインとダコタアクセスパイプライン計画を、就任4日目で復活させた(現在、ダコタアクセスパイプラインは操業中だが、裁判所による環境評価を命じられている。キーストーンXLは、訴訟や手続き上の問題で中断)。また、政権は一部ガスラインの管理を怠った農村部の事業者に責任を追及しないと発表。(参考記事:「パイプライン反対は適切な戦略か?」

 石炭生産の新規リース契約の一時停止を終了。ほとんどの沿岸水域を石油・ガス開発に開放しようとしたが、20年9月の選挙運動中に、フロリダ州、ジョージア州、サウスカロライナ州沿岸を除外した。メキシコ湾で32万平方キロメートルの油田リース権を販売する計画を発表したが、今秋末まで延期された。ここ10年以上、フラッキングのおかげもあって増加傾向にあった米国の産油量だが、トランプ氏の大統領就任後は石油と天然ガスの輸出量が輸入量を上回り、米国はサウジアラビアとロシアを超えて世界最大の産油国となっている。

 またトランプ氏は大統領就任後に、石油、天然ガス、石炭開発の規制を緩和する大統領令を発した。このため、スピーディーに液化天然ガス輸出の承認手続きができるようになった。オバマ政権は、石油・ガスの採掘事業者に対しメタン排出を抑える努力をするよう要請していた。しかしトランプ政権になってからは、一部の大手石油会社が反対したにもかかわらず、要請は撤回されている。また、連邦政府が管轄する大陸棚での原油流出対策強化も、トランプ政権になってから緩和された。

バイデン氏:
 オバマ政権の流れをくんで、キーストーンXLパイプライン計画の停止を約束。ダコタアクセスパイプラインについては立場を公にしていないが、副大統領候補のカマラ・ハリス上院議員は、閉鎖を求める連邦判事への要望書に署名した。

 化石燃料業界から選挙資金を受け取ることを拒否し、国内外で化石燃料への政府補助金廃止を求めると約束。北極野生生物保護区を再指定し、石油・ガスの開発対象から北極海を除外すると約束。公有地での新規石油開発許可に反対し、海洋掘削を禁止する。だが、最近になって「フラッキングは禁止しない」と発言した。 (参考記事:「経済か環境か、シェール開発と環境」

 諸外国と協力して、中国に対し、化石燃料プロジェクトの輸出をやめてクリーンエネルギーへの融資を提案するよう働きかける。また、最貧国以外への石炭融資を廃止するようG20(先進国に新興国を加えた20カ国・地域)を説得する。

 すべての石油事業のメタン排出量に新たな上限を設ける。使用済みの油井、ガス井、炭鉱を埋め立て、トランプ政権が廃止したオバマ政権時代の環境規制を復活させ、電力部門における化石燃料の使用を15年以内に廃止する。 (参考記事:「【動画】アラスカの湖からメタンの泡の悪循環」

参考ギャラリー:地球の美も痛みも一目瞭然 パラグライダーとドローンで撮った絶景 写真23点(画像クリックでギャラリーへ)
参考ギャラリー:地球の美も痛みも一目瞭然 パラグライダーとドローンで撮った絶景 写真23点(画像クリックでギャラリーへ) オランダの首都アムステルダムの北東、フレボラント州。かつて1300平方キロにも及んでいた干潟を農地に転換した際に築いた堤防沿いに、何十もの風力タービンが並ぶ。風力タービンやソーラーパネルが安価かつ高効率になるにつれ、エネルギー需要は高まり続けている。露天掘り鉱山や煙突が思い出になった後も、エネルギー施設がこの景観の中で一際目立つ特徴となるだろう。(PHOTOGRAPH BY GEORGE STEINMETZ)

次ページ:気候変動対策と再生可能エネルギーへのスタンス

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