NASAの宇宙飛行士選考責任者アン・ローマー氏と前回2017年の選考を勝ち残った宇宙飛行士候補生。前回は1万8000人以上の応募があり、写真の候補生たちは2020年に卒業した。(PHOTOGRAPHY BY ROBERT MARKOWITZ, NASA)
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 米国の航空宇宙局(NASA)で現在、宇宙飛行士の選考が進んでいる。2020年3月に候補生の募集が行われると、1万2040もの人が応募した。

 当初、20年9月後半~10月前半が一次面接の予定だったが、新型コロナによるパンデミックのため、面接は2021年春に延期された。「延期となりましたが、それだけ応募書類をじっくり見る時間ができました」とNASAの宇宙飛行士選考責任者アン・ローマー氏は説明する。

 パンデミックがなかったとしても、宇宙飛行士を選ぶのは容易なことではない。宇宙飛行士は自制心も柔軟性も兼ね備えた人物である必要がある。さらに、冒険好きでありながら、安全意識は高く、リーダーであると同時に時には指示に従うフォロワーでなくてはならない。「je ne sais quoi(フランス語で、何とも言えない何か)」、つまり「ライトスタッフ(不可欠な資質)」を持った人物が求められるのだ。

 現在、ローマー氏と現役の宇宙飛行士から成る選考委員会が応募者を精査し、地球上で最も排他的とも言える集団に適した特性と経験を併せ持つ候補者を最終的に10人前後まで絞ろうとしている。選ばれた候補者から、人類初の火星着陸という偉業を成し遂げる人物が現れる可能性もある。(参考記事:「2018年3月号 宇宙に行って眺めた地球は「天国よりも美しい」」

 ナショナル ジオグラフィックはローマー氏にインタビューを申し込み、NASAはどのように宇宙飛行士を選んでいるのか、候補者に求めていることは何か、現在の宇宙船をどう考えているかなどを語ってもらった。以下に、ローマー氏とのインタビューを抜粋してお届けしよう。

――宇宙飛行士候補生は何人くらい選ぶ予定でしょうか?

 自然減に対応できるよう、人員には余裕を持たせようと考えています。他部門に異動したり、宇宙飛行士を引退したりする人が出るためです。大ざっぱに言えば、8~12人くらいになるでしょう。どの候補も落としたくないような場合、過去の例を見ると12人近く選ぶこともありえます。

――選考プロセスを教えてください。

 まずは書類選考です。私たちはここで、応募者を初めて知ることになります。次に、リファレンスチェック(候補者の関係者への問い合わせ)を行って絞り込んでいきます。最終的には、120人前後に一次面接に来てもらいます。そこで、技能試験や基本的な健康診断をして、40~60人が二次面接へと進みます。

 二次面接に残った候補者は1週間ほど私たちと過ごします。チームワークのテストや個人能力のテストなど、さまざまなことを行い、良い宇宙飛行士になるために必要な資質があるかどうかを評価します。

――今回は応募条件が変わったと聞きました。具体的に何を変えたのでしょう。また、その理由は何ですか?

 1万8000人以上の応募があった前回の募集の反省からです。前回は、修士号は「あれば望ましい条件」としましたが、今回は修士号を持っていることを必須条件としています。これは、最近の候補生を振り返ってみても、学士号のみの人物を結果として選んでいないことが分かったためです。

参考ギャラリー:人類の宇宙飛行の歴史 写真39点(画像クリックでギャラリーへ)
人類が宇宙に飛び出してから60年近くが経つ。ユーリ・ガガーリンが地球の大気圏を超えた最初の宇宙飛行から、国際宇宙ステーションの建設と居住に至るまで、さまざまな出来事を振り返る。

次ページ:多様な宇宙飛行士志願者たち

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