レッサーハナナガコウモリは、砂漠の生態系に欠かせない花粉媒介者だ。(PHOTOGRAPH BY TOM VEZO, MINDEN PICTURES)
[画像をタップでギャラリー表示]

 アメリカ大陸最古の蒸留酒メスカルの人気が再燃している。米国では、2019年の輸入量が50%以上増加し、原産国であるメキシコの消費量を初めて上回った。2020年の状況はまだわからないが、業界は成長傾向が続くと予測している。

 メスカルは、とがった葉のある大型の砂漠植物リュウゼツラン(アガベ)を原料にするメキシコの蒸留酒。地域密着型で小規模の製造が多い。

 だが、その人気の高まりは、ある動物にとってはバッド・ニュースとなる。花蜜を作り出す前にリュウゼツランが過剰に刈り取られることで、主要な花粉媒介者であるレッサーハナナガコウモリ(Leptonycteris yerbabuenae)が大きな影響を被るというのだ。

 体重30グラム足らずのレッサーハナナガコウモリは、小さいが勇敢な哺乳類だ。メキシコ中部で冬を過ごした後、米国とメキシコの国境沿いの洞窟で出産するため、毎年1200キロ以上も移動する。サボテンの花やリュウゼツランの花を探しながらの長旅だ。コウモリたちが往復の燃料をリュウゼツランの蜜に頼っている一方で、リュウゼツランもコウモリの手を借りて受粉している(リュウゼツランは夜行性の動物を引きつけるため、日没後に蜜の多くを出すように進化してきた)。(参考記事:「2014年3月号 コウモリを誘う花の“声”」

 レッサーハナナガコウモリは、以前から生息地の減少によって危機にさらされてきた。1980年代には約1000匹まで減少したが、活発な保護活動のおかげで、メキシコ全土と米国南西部でおよそ20万匹まで個体数が回復。2018年には米国の絶滅危惧種リストから除外された。これは、コウモリとしては初めてのことだ。

参考ギャラリー:絶滅の危機から復活しつつある動物 11選(画像クリックでギャラリーへ)
レッサーハナナガコウモリは、ほぼ花の蜜だけを食べて生きる珍しいコウモリの1種。テキーラの原料となるリュウゼツランの花粉を媒介することから「テキーラコウモリ」の愛称もある。米国の絶滅危惧種リストから外された。(PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NATIONAL GEOGRAPHIC PHOTO ARK)

 だが、メスカル人気と気候変動が続けば、せっかく増えたコウモリが減少する恐れがあると、自然保護活動家は警告している。気候変動の影響でリュウゼツランの開花が早くなり、コウモリが飛来する前に花が咲いてしまうのだ。2020年に発表されたある論文は、このコウモリが再び減少に転じたと報告している。(参考記事:「【動画】レッサーハナナガコウモリはどうやって我が子を見つける?」

 専門家はすでに解決策を提唱している。持続可能なリュウゼツランの収穫だ。つまり、リュウゼツランを選択的に収穫し、一部を再繁殖のために残しておくよう農家に奨励するのだ。

次ページ:100年に及ぶ過剰収穫

ここから先は「ナショナル ジオグラフィック日本版サイト」の会員の方(登録は無料のみ、ご利用いただけます。

会員登録(無料)のメリット

  • 1ナショジオ日本版Webの
    無料会員向け記事が読める
  • 2美しい写真と記事を
    メールマガジンでお届け

おすすめ関連書籍

PHOTO ARK 消えゆく動物

絶滅から動物を守る撮影プロジェクト

今まさに、地球から消えた動物がいるかもしれない。「フォト・アーク」シリーズ第3弾写真集。 〔日本版25周年記念出版〕

定価:本体3,600円+税