新型コロナワクチン、社会的弱者を優先すべき理由

全米医学アカデミーが提言、「公平さ」と物流が大きな課題に

2020.10.17
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このほど発表された全米医学アカデミーの報告書は、新型コロナウイルスワクチンの優先的な接種対象に、緊急対応要員だけでなく社会的弱者も含めるよう歴史上初めて提言している。(PHOTOGRAPH BY STEPHEN FERRY, REDUX)
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 新しいワクチンが承認されるたびに、保健当局は、最初に誰に接種するべきかという難しい問題を考えなければならない。通常は医療従事者が優先されるが、2009年に新型インフルエンザ(H1N1型)が流行したときには、重症化リスクの高い人々も優先された。

 世界中の人々が待ち望む新型コロナウイルスワクチンについては、新たに考慮しなければならない要素がある。公平性だ。

 全米医学アカデミーは10月2日、米国立衛生研究所(NIH)と米疾病対策センター(CDC)からの委託で作成した237ページにおよぶ報告書の中で、新型コロナワクチンの配布に関する提言を明らかにした。

 報告書は、完成したワクチンを4段階に分けて配布するように提案している。当然ながら、最初に接種を受けるべき人としては、医療従事者、警察官や消防士などの緊急対応要員、基礎疾患のある人、グループホームに住む高齢者が挙げられている。世界保健機関(WHO)も同様の勧告をしている。

 だが報告書は、今までにない提言もしている。それは、CDCの「社会的脆弱性指標」のスコアが高い人々を優先することだ。これは貧困、乏しい交通機関、狭い住居での密集した生活など、健康状態の悪さと関連づけられる要因を数値化したものだ。

 報告書を執筆したウイルス学者、疫学者、経済学者などからなる委員会は、パンデミック(世界的大流行)がマイノリティーや貧しい人々に深刻な影響を及ぼしている現状を是正し、「健康の公平を促進する新たな取り組みを行う」ことが目標だと述べている。

 格差の存在は明らかだ。米国ではアフリカ系、ヒスパニック系、アメリカ先住民が新型コロナウイルスに感染する確率は白人の3倍で、黒人の死ぬ割合は白人の2倍に上る。

「すべての人々を平等に考えること。そして、アフリカ系、ヒスパニック系、アメリカ先住民を不健康な状況や職業につかせている社会的不平等やその要因に対処すること。この(報告書で提案された)アプローチにより、それらが可能になります」。委員会のメンバーであり、米テキサス大学オースティン校デル・メディカルスクールのジュエル・マレン健康公平性担当副学部長はそう話す。

 報告書には含蓄に富む指針が示されているが、それをどのようにして実践するのか、また、前例のないワクチンの配布と接種に向けて国が準備を進める中で、状況次第で指針がどう変化するかは定かではない。(参考記事:「「貧困への逆戻りが起きる」ビル・ゲイツ氏に聞くコロナ下の世界」

次ページ:誰を優先するか、どうするのが公平か

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