2020年10月1日、米国カリフォルニア州ナパ郡、ソノマ郡のワイン生産地で猛威を振るう森林火災「グラスファイア」。10月7日までに、271平方キロ以上の土地と630軒以上の住宅が消失した。地域経済を牽引するブドウ栽培は近年、森林火災によって壊滅的な打撃を受けている。(Photograph by Stuart Palley, National Geographic)

 世界的に有名なワイン生産地、カリフォルニアのナパバレーが、危険な時代に突入した。

 2020年に起こった前代未聞の森林火災によって明らかになったのは、この地のブドウの収穫シーズンは、今や森林火災のシーズンでもあるという事実だ。

 まず8月に、落雷をきっかけにした森林火災が発生、最終的に1500平方キロを超える範囲に燃え広がり、5人の死者を出した。

 9月下旬には、ナパバレーで「グラスファイア」と呼ばれる別の火災が発生した。これはまたたく間にナパバレー史上最悪の森林火災となり、約300軒の住宅を含む1235棟の建物が破壊された。

2020年10月2日、消防隊を率いる大隊長。乾燥した植生と北風が、すでに壊滅的な被害をもたらしていたグラスファイアをさらに拡大させる恐れがあった。(Photograph by Stuart Palley, National Geographic)

 ナパは米国で最も有名かつ重要なワイン生産地であり、総額400億ドル規模とされるカリフォルニアのワイン産業を代表する地域だ。しかしここ数年、大規模な森林火災が続いていたところに、今年の被害が追い打ちをかけ、産業は存続の危機にさらされている。

 森林火災の影響はあらゆる面に広がっている。農園で働く人々は、息もできないような煙の中で作業をするか、作業をすべてあきらめるかの選択を迫られている。地域経済を支える観光産業も脅かされている。ナパバレーを訪れる観光客の消費額は、年間22億3000万ドルに上ると言われる。(参考記事:「カリフォルニアで人気上昇中のワイン生産地へ行こう」

森林火災の煙と炎により、ナパ郡、ソノマ郡のワイン産地ではブドウの木が被害を受け、2020年の収穫の大半が絶望視されている。(Photograph by Stuart Palley, National Geographic)

 さらには、ワインそのものの存続も危ぶまれている。ある試算によると、火災と煙によって引き起こされるさまざまな影響により、2020年にナパバレーで収穫されるカベルネ・ソーヴィニヨン種のブドウの8割が、ワインの原料には使えない可能性があるという。

 カリフォルニアのワイン生産地で起こっている森林火災は、建物だけにとどまらず、同地域の経済的・文化的基盤をも破壊する勢いなのだ。

次ページ:26カ所のワイン施設やブドウ園に損害

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