世界遺産タムガリ峡谷、無数の岩絵に隠された謎

太陽神、動物、儀式……数千年の歴史伝える、カザフスタンの岩絵群5000点

2020.10.17
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

シャーマンと太陽神

 研究では、主にタムガリ峡谷中央の東斜面に集まっている最も古い時代の岩絵3000点を5つのグループに分類した。

 最も北にあるのがグループI。霊界にアクセスするシャーマンと思われる人間や、狩りの場面、オオカミなど地元の野生動物の絵が100点、目立たない場所に残されている。

 その南がグループIIで、グループIより目立つ位置に描かれており、礼拝者やシャーマン、性交の描写、シカや雄牛などが含まれている。グループIIIには800点の絵があり、動物関連の儀式、特に牛や馬に関する儀式を行う人々を描いたものが多い。

儀式で踊る人々とラクダを描いたタムガリの岩絵。鉄器時代初期のもの。(KEREN SU /ALAMY/ACI)

 グループIVは、峡谷の西側で唯一岩絵が密集している所で、出産中らしき女性の周りで人間が踊っているような姿を描いたものが大半を占める。このグループは、上の斜面に位置し、峡谷からはっきりと見える。

明るい太陽神、暗い雄牛

 最も南にあるのがグループVで、1000点ほどの岩絵がある。一連の絵は、構成がより複雑で、考えた上で描かれたようだ。斜面を上がるにつれ、岩絵の内容も変化する。下部は礼拝者やシャーマンの絵、上部には太陽神らしき特徴的な姿が描かれている。それは人の形をしており、頭は光線を放射する円になっている。さらに上に行くと、複数の太陽神に戦車が添えられた場面が現われる。

 この5グループの岩絵3000点は、青銅器時代中期(紀元前1500年〜紀元前1200年)と青銅器時代後期(紀元前1200年〜紀元前900年)のもの。タムガリには太陽のような頭をした姿の絵が26点現存しており、この太陽神が特に崇拝されていたのではないかと研究者らはみる。

ギャラリー:世界遺産タムガリ峡谷、カザフスタンの岩絵群5000点 写真5点(画像クリックでギャラリーへ)
太陽神と見られる岩絵。太陽のような頭を持ち、雄牛の背中に乗っている。雄牛と太陽神の関係はタムガリに特有のものであり、光と闇という相反する力を表していたのかもしれない。(KEREN SU/ALAMY/ACI)

 青銅器時代の岩絵でもう1つ圧倒的に多いのが、雄牛だ。雄牛の絵自体は、太陽神と同様、この地域の他の岩絵遺跡にも見られる。だが、太陽神と雄牛が一緒に描かれている例は、タムガリだけだ。グループIVの岩絵では、太陽神が雄牛の上に立っている。研究者たちはこの配置を、太陽神の頭から放出される光線の光と黒い雄牛の闇を対比させる二元論的な考えだと解釈してきた。

次ページ:時代とともに変わる絵からわかること

おすすめ関連書籍

あの場所の意外な起源

断崖絶壁寺院から世界最小の居住島まで

断崖絶壁寺院、共産主義の理想都市、閉鎖された地下水生態系など、普通とはちょっと違う場所を世界中から45カ所集め、「地図」「写真・イラスト」「テキスト」でそれぞれの場所の成り立ちや発見などの意外な起源を伝える。

定価:本体2,400円+税

  • このエントリーをはてなブックマークに追加