気候変動と同様、プラスチックごみの問題も今後数十年間で世界がどのように対応するかにかかっている。また、どちらの問題も根本には石油という共通の資源がある。だが、両者でひとつ大きく異なる点は、プラスチックは半永久的に残り続けるという事実だ。
気候変動の場合、確率は低いものの、テクノロジーと自然生態系の回復によって二酸化炭素を減らせるかもしれないが、プラスチックの場合はそうはいかない。今のところ環境中にまぎれこんだプラスチックは実質的に分解不可能であり、消えてなくなることもない。
「海のプラスチック汚染に対処できなければ、植物プランクトンからクジラまで、世界中の海の食物網が汚染の危機にさらされてしまいます。そして、科学がこれに追いつく頃には、もう遅いと結論するしかなくなるでしょう。そこまで行ったら、もう元に戻すことはできません。途方もない量のプラスチックが、海の野生生物の中に半永久的に残ってしまいます」。非営利団体オーシャン・コンサーバンシーの主任科学者で、最新の報告書を書いた研究チームのひとりでもあるジョージ・レナード氏はそう述べた。
2つの研究結果が一致した点は
最新の研究報告は、米メリーランド大学の国立社会環境総合センターを通じて米国立科学財団が資金提供した科学者チームによってまとめられた。また7月には、米国の非営利団体である「ピュー慈善信託」と英ロンドンの環境顧問投資会社「システミック」が同様の研究結果を公表している。こちらの方は、2040年までに海へ流出するプラスチックの量を予測したもので、2つの研究結果は、9月に「Science」誌の同じ号に掲載された。
別々の科学者チームが異なる方法と時系列を使って、大枠で同じ結論に達するのは珍しい。どちらの研究も、海へ流出するプラスチックの量が年々増えている原因は増加するプラスチック製造量にあり、それは世界が回収できるプラごみの量を上回るペースで増加していると指摘。ごみを削減するにはバージンプラスチック(リサイクル素材を使わないプラスチック)の製造を減らさなければならないという点で一致している。
さらに2つの研究は、プラスチックごみを完全になくせないとしても、既存のテクノロジーを使って大幅に減らすことは可能だと結論付けた。ごみやリサイクル資源の回収事業を改善し、製品を設計しなおしてリサイクルできないプラスチックの包装を減らし、容器の再利用を増やし、場合によっては別の原料を使うことも考えられる。また、現在世界的に12%前後にとどまっているリサイクル率を上げるために、リサイクル施設のない場所に新たに建設するなど、大掛かりな規模拡大も必要だ。
プラスチック業界は2つの研究結果を評価しているが、バージンプラスチックの製造を削減するという考えには賛同しない。米化学工業協会は、「極めて非生産的で非現実的」な提案だと主張する。ポリエチレンの世界的な製造メーカーであるエクソン・モービルとダウ・ケミカルも同意見だ。
「プラごみ問題を解決するために製造を削減すれば、結果的には二酸化炭素の排出量を増やし、気候問題に拍車をかけることになります。なぜなら、代替品の方が製造による排出量が多いためです」と、ダウ・ケミカルは指摘する。
確かに、プラスチックの製造はガラスやアルミニウムの製造よりも、炭素排出量や使用する水の量が少ない。だが、この主張は環境の浄化にかかる費用や製品の重さといった全ての要素を考慮に入れてはいないという指摘もある。