ブッダの謎に考古学で挑む、最古の仏教寺院発掘も

謎に包まれたその生涯や生没年、世界遺産の生誕地ルンビニを調査

2020.10.12
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1世紀の黄金の聖遺物容器(ビマラン棺)に刻まれた仏陀像(中央)。アフガニスタン東部ビマランのストゥーパ(仏塔)の中から発見。大英博物館収蔵。(SCALA, FLORENCE)
1世紀の黄金の聖遺物容器(ビマラン棺)に刻まれた仏陀像(中央)。アフガニスタン東部ビマランのストゥーパ(仏塔)の中から発見。大英博物館収蔵。(SCALA, FLORENCE)

 学者たちは、彼がその後、人々に教えを説き、サンガ(僧伽=そうぎゃ)と呼ばれるようになる出家者集団をもつようになったと考えている。ブッダは、悟りを開くために世俗に背を向け、執着を捨てることを説いた。

 仏教では一般に、大半の人は輪廻(りんね)する、つまり死と再生を無限に繰り返しているとされ、この苦しみから解放されるためには悟りを開いて輪廻から解脱しなければならないと教えられている。

 初期の仏典には、ブッダの生涯について共通の物語が記されているが、その時期についてはばらつきがあり、紀元前2500年頃とするものもあれば、紀元前3世紀末とするものもある。

 ブッダの死後、その教えは徐々に発展して新しい独自の宗教となり、熱心な信者によってアジア各地に広められた。だが当時の北インドでは、知的で宗教的な雰囲気のなかで多くの小さな宗教が生まれており、初期の仏教もその1つに過ぎなかったと考えられている。

インドのビハール州ブッダガヤのマハーボーディ寺院(大菩提寺)は、ブッダ(仏陀)が菩提樹の下で悟りを開いた場所と伝えられている。最初に建造されたのは紀元前3世紀のアショーカ王の時代で、現在のレンガ造りの建物は後5世紀のもの。(OLAF SCHUBERT/ALBUM)
インドのビハール州ブッダガヤのマハーボーディ寺院(大菩提寺)は、ブッダ(仏陀)が菩提樹の下で悟りを開いた場所と伝えられている。最初に建造されたのは紀元前3世紀のアショーカ王の時代で、現在のレンガ造りの建物は後5世紀のもの。(OLAF SCHUBERT/ALBUM)

アショーカ王の登場

 紀元前3世紀になると、この新しい宗教を急成長させることになる偉大な王が権力を握る。その名はアショーカ、古代インドのパータリプトラ(現在のパトナ)を首都とするマウリヤ朝の創始者チャンドラグプタ王の孫だ。マウリヤ朝は、マケドニアのアレクサンドロス大王が紀元前323年に死去した後の権力の空白を利用して、北インド全域に支配を広げていた。(参考記事:「アレクサンドロス大王の墓、21年がかりで探求」

仏教に帰依したマウリヤ朝のアショーカ王は、領土各地に碑文を残した。この石柱は、紀元前249年頃に王がルンビニを訪問したことを記念して建てた碑。(IRA BLOCK/NGS)
仏教に帰依したマウリヤ朝のアショーカ王は、領土各地に碑文を残した。この石柱は、紀元前249年頃に王がルンビニを訪問したことを記念して建てた碑。(IRA BLOCK/NGS)

 紀元前265年頃に即位したアショーカ王は、さらなる領土を求めて近隣諸国を征服し続けた。ところが即位から8年目に、彼の精神を大きく変える経験をした。

 彼自身の告白によると、それは隣国カリンガを征服した後に起きたという。自分が起こした戦争によって人々が苦しむ姿を目にして激しく後悔し、暴力を放棄して仏教に帰依したのだ。そして、仏教の教えを国家政策とし、各地に建てた石柱や自然の岩に自身の新しい統治理念を刻ませた。

インド中部サーンチーのストゥーパは紀元前3世紀にアショーカ王によって建てられた。北門には釈迦の生涯の場面が刻まれている。ドーム型のストゥーパはインドやネパールの各地で見られる。(UNIQUELY INDIA/AGE FOTOSTOCK)
インド中部サーンチーのストゥーパは紀元前3世紀にアショーカ王によって建てられた。北門には釈迦の生涯の場面が刻まれている。ドーム型のストゥーパはインドやネパールの各地で見られる。(UNIQUELY INDIA/AGE FOTOSTOCK)

 アショーカ王が信奉したことで、仏教は瞬く間にインド全土に広まった。紀元前50年頃には、様々な宗派がシルクロードなどの交易路に沿って伝わり、6世紀までには遠く離れた日本にまで到達した。仏教が広まると、信者たちはブッダの生誕地であるルンビニに巡礼するようになった。

次ページ:再び脚光を浴びたルンビニ

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