古生物学を象徴するその有名な羽根の化石は、1861年にドイツの石灰岩の採石場で発見された。ジュラ紀の岩石の中から見つかったその羽根は、現代の鳥に非常によく似ており、人々に衝撃を与えた。
1億5000万年前のこの羽毛は、近くの岩石の中から発見された始祖鳥(Archaeopteryx lithographica)のものとされた最初の化石である。カラスほどの大きさの始祖鳥の化石には鳥類と恐竜の特徴が混ざっていて、ダーウィンの進化論を裏付ける証拠の一つとなった。
この化石はしかし、最も有名な羽根化石であると同時に、最も論争の多い羽根化石でもある。2019年には、この羽根は始祖鳥のものではないと示唆する論文さえ発表された。
問題になっているのは、始祖鳥に羽毛があったかどうかではない。既知の13体の始祖鳥の骨格化石の多くに羽毛の痕跡が残っているので、この点について異論の余地はない。問題は、鳥の進化史を語る初期の証拠となっている象徴的な羽根が、本当に始祖鳥のものなのかという点である。
今回、ナショナル ジオグラフィック協会のエクスプローラーであるライアン・カーニー氏の研究チームは、これまでで最も徹底的な分析により、この羽毛は始祖鳥のものであると断定した。
米南フロリダ大学の古生物学者でデジタル科学者でもあるカーニー氏は、「誤りのある2019年の研究は、文献のみならず大衆文化を通じて広く知られるようになりました」と言う。「間違いを正すことは、私にとって大きな意味があります」
論争の多い羽根
今回の論文は、羽根化石に関する論文の発表日からちょうど159年となる9月30日付けで学術誌「Scientific Reports」に発表された。動作から外見まで、始祖鳥に関するすべてを解明しようとするカーニー氏の最新の研究成果だ。
カーニー氏は子供の頃から始祖鳥の虜だった。大学では始祖鳥の復元に役立てるために3Dモデリングを学び、卒業制作である自分のロックバンドのミュージックビデオにもこの羽根を登場させた。羽根化石の論文の発表から150周年を迎えたときには、記念として自分の腕に羽根化石のタトゥーを入れた。
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