エベレストの本当の高さは? ネパールと中国が最新の計測

8848メートルは1954年の計測、ナショジオは8850メートルを採用

2020.10.02
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 測地学者は、「楕円体」と「ジオイド」と呼ばれる2種類のモデルを使って地球の形を定義している。楕円体モデルは、地球を上下から押しつぶしたような滑らかな楕円形に見立てる。卵を横にした形を想像するとよい。数学的に定義された楕円体にはいくつかの種類があるが、米国で最も一般的なWGS84座標参照系は、ほとんどのGPSシステムで、経度と緯度の座標を立体的に示す基準面として採用されている。

 ジオイドモデルは、地球の重力の影響を考慮して、全世界が海で覆われた場合の仮想的な平均海面の高さを計算する。地球内部の密度は均一ではないので、場所によって重力は変化する。したがって、海水面も場所によって地球の中心へ向かってわずかに引っ張られたり離れたりしている。ジオイドで示される地球は、横に置かれた卵というよりは、ごつごつしたジャガイモのような形をしている。

 ナショナル ジオグラフィック協会の地理学者アレックス・テイト氏は、「これを、重力の等ポテンシャル面といいます。エベレストの下に海があると仮定し、その海面がどの高さにあるのかを知る必要があります」と説明する。

 1850年代に初めてエベレストの標高を測り、地図に書き入れたのは、インド測量局長官のジョージ・エベレスト卿に雇われた英国の測量団だった。彼らは、エベレストに最も近い海であるベンガル湾から出発して、北へ向かって丘の上から別の丘の上へと中継点を置き、ジグザグの見通し線を引いた。ついにはエベレストが視界に入り、三角測量が可能な位置までこれを続け、海面を計算した。

 地球の丸みも計算に入れるために、数学的に複雑な地球楕円体モデルの基となった回転楕円体モデルを使用した。その結果、エベレストの標高は8840メートルと算出された。それからおよそ100年後の1954年、インド測量局が同様の手法を使い、雪冠も含めた高さを8848メートルとした。

1999年、エベレストの標高を計測するため、米国の探検隊が山頂に設置したGPS受信器。(PHOTOGRAPH BY TRIMBLE)
1999年、エベレストの標高を計測するため、米国の探検隊が山頂に設置したGPS受信器。(PHOTOGRAPH BY TRIMBLE)
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 その数値は、驚くほど精度が高かったことが後に明らかとなる。1999年、地図製作者で冒険家のブラッドフォード・ウォッシュバーンは、ナショナル ジオグラフィック協会の支援を受け、GPS技術を使ってエベレストの標高を計測し、8850メートルという数値をはじき出した。1954年の数値との差異はわずか2メートルだ。そして2005年には、中国が雪を除いた標高を8844メートルと計測した。現在、1954年、1999年、2005年の数字はそれぞれ異なる国や組織によって認められ、使用されている(ナショナル ジオグラフィック協会は、1999年の数字を使用している)。(参考記事:「エベレストの標高が2メートル高くなりました!ナショジオの計測」

 ネパール測量局の最高測量責任者であるガウタム氏は、どんなに最新の機械や技術を使ったとしても、エベレストの標高に明確な答えを出すことは難しいと話す。「地図作製において、正確な点や標高を見つけることはできません。ですから、私たちは最も正確に近いと思われる値、つまり最確値を探そうとします」

 ガウタム氏の調査隊は最終的に、GPSと水準測量(19世紀からの技術だが、今はレーザー装置を使う)を使用することを決めた。最も高い岩の高さだけでなく、氷雪の層を加えた高さも計算した。

ネパールの観測隊。左側に立っている人物が、責任者のキムラル・ガウタム氏。エベレストのベースキャンプにて。(PHOTOGRAPH BY FREDDIE WILKINSON, NATIONAL GEOGRAPHIC)
ネパールの観測隊。左側に立っている人物が、責任者のキムラル・ガウタム氏。エベレストのベースキャンプにて。(PHOTOGRAPH BY FREDDIE WILKINSON, NATIONAL GEOGRAPHIC)
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