アマゾンの孤立部族の矢で保護団体職員が死亡

侵入者と間違えられたか、孤立部族保護の第一人者

2020.09.25
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ブラジル、ロンドニア州の広大なウルエウワウワウ先住民テリトリーには、ジャングル奥深くで孤立して生活する3部族も含めて、5つの先住民グループが暮らす。保護区となっていても、違法な伐採者、採掘者、土地の投機家も侵入する。こうした高まる緊張が、FUNAIの現場職員で先住民の擁護者だったフランシスカト氏が矢で攻撃されて死亡した事件の一因となったと専門家はみている。写真は、倒木の上を歩いて川を渡る先住民で、2019年に撮影されたもの。 (PHOTOGRAPH BY UESLEI MARCELINO, REUTERS)
ブラジル、ロンドニア州の広大なウルエウワウワウ先住民テリトリーには、ジャングル奥深くで孤立して生活する3部族も含めて、5つの先住民グループが暮らす。保護区となっていても、違法な伐採者、採掘者、土地の投機家も侵入する。こうした高まる緊張が、FUNAIの現場職員で先住民の擁護者だったフランシスカト氏が矢で攻撃されて死亡した事件の一因となったと専門家はみている。写真は、倒木の上を歩いて川を渡る先住民で、2019年に撮影されたもの。 (PHOTOGRAPH BY UESLEI MARCELINO, REUTERS)
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 確かにここ数カ月、ロンドニア州中央部では、緊張が高まってきていた。先住民テリトリーに侵入して放牧や採掘、伐採をする事例が州全域で増加しており、土地を開拓するために農民が放った火が一帯の森を襲ったと、地元の権利擁護者たちは言う。いくつもの森林火災が、カウタリオ族が歩き回る地域で報告されている。

 20年6月には、カウタリオ族と思われる数人が、ウルエウワウワウ保護区の端にある町セリンゲイラスの郊外に侵入し、農民をパニックに陥れた。彼らは、斧や鶏をはじめ、多くの家庭用品を奪い、野生動物の肉の塊を残していった。明らかに代金としてだった。当時、フランシスカト氏たちは、カウタリオ族がセリンゲイラスに侵入した際、コロナウイルスに感染していないか危惧した。

 ブラジル最大の部族組織連合であるブラジル先住民連合(APIB)によると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で800人近くの先住民が死亡し、3万1000人以上が感染、158のコミュニティーに影響が及んでいる。これまでのところ、ウルエウワウワウ先住民テリトリーに暮らす部族では、感染の報告はない。 (参考記事:「アマゾン孤立部族に新型コロナの死者、その危険性」

接触する計画だった?

 カウタリオ族が20年6月にセリンゲイラスに侵入した直後、バズ氏はフランシスカト氏から秘密を打ち明けられたと言う。ボルソナロ大統領に任命されたFUNAIの孤立先住民局のジェネラル・コーディネーターであるリカルド・ロペス・ディアス氏から「カウタリオ族と接触する準備をするよう」に電話で指示されたというのだ。なお、ディアス氏は、孤立部族と接触して伝道しようとする宗教団体「New Tribes Mission」の元宣教師だ。

 ディアス氏がブラジル最後の流浪の部族たちと接触する計画を胸に秘めているのかもしれないと、権利擁護派は疑っている。フランシスカト氏は、ディアス氏の要請を公表した場合の報復を恐れ、電話の詳細を内緒にするようバズ氏に頼んだという。(参考記事:「宣教師を殺害したインド孤立部族、侵入者拒む歴史」

 ナショナル ジオグラフィックのメール取材に対し、FUNAIはこの主張を否定。「ヒエリ・フランシスカト氏に対し同地域の孤立先住民との接触を図ろうという提言はなかった」と述べた。声明によると、2人が話し合ったのは「FUNAI側には意図が無い、平和的で自然な接触の可能性」だったという。

 先週、カウタリオ族がセリンゲイラスに再び現れた時、フランシスカト氏は小規模チームを集めて、開拓者たちを落ち着かせ、彼らがもう一度やってきた理由の調査を始めた。

 何がカウタリオ族を刺激したのかはわからないが、この地域で活動したことのある専門家は、このグループの性格からすると殺す意図を持って矢を撃つというのは「おかしい」と言う。(参考記事:「アマゾン、森の先住民の知られざる日常」

「何かきっかけがあったと思います。彼らに対して、攻撃と思われても仕方ないことをしたのではないでしょうか」とイバネイデ・バンデイラ・カルドーゾ氏は話す。同氏は、1980年代にフランシスカト氏と共同で設立した、ロンドニア州を拠点に活動する権利団体「Kanindé Ethno-Environmental Defense Association」でプロジェクト・コーディネーターを務めている。「彼らを怖がらせ、脅威を感じさせる何かがあったのは、確かです」(カルドーゾ氏)

次ページ:人不足と高まる緊張の中で働く現実

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