アマゾンの空の覇者 オウギワシを救え

地球上で最も壮観な鳥が姿を消しつつある

2020.10.01
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
誌面で読む
ブラジルのアマゾン川流域にある巣でひなを守るオウギワシ。雌は雄よりも体が大きく、体重は最大11キロほどになり、かぎ爪はハイイログマの爪より大きいことがある。中南米に広がる生息域は1800年代以降に40%以上も縮小した。(PHOTOGRAPHS BY KARINE AIGNER)
この記事は、雑誌ナショナル ジオグラフィック日本版 2020年10月号に掲載された特集です。定期購読者の方のみすべてお読みいただけます。

世界最大級のワシの生息地が森林破壊によって減少するなか、科学者やナッツの採集者、観光業者が協力して保護に取り組んでいる。

 近道だと思っていたルートは、茶色い水が腰の高さまで達し、私はつまずきながら歩いていた。

 クモの巣をかき分け、先導するブラジル人生物学者のエバートン・ミランダの後に続く。すでに調査アシスタントが水たまりに倒れ込んで高価なカメラが1台壊れ、写真家のカリーヌ・アイグナーの腕はハチに刺されて腫れ上がっていた。

 だが、たとえ引き返すことが脳裏をかすめても、誰も口には出さなかった。重要な使命があったからだ。私たちは、見つけるのが難しいオウギワシの巣を探していた。噂では、ブラジルのマット・グロッソ州に広がるアマゾンの熱帯雨林を1.5キロほど入った場所にあるはずだった。

 艶のある白と黒の体、どう猛な目、ふさふさした顔の羽毛をもつオウギワシは世界最大級のワシで、地球上で最も壮観な鳥ともいわれる。ナマケモノを引っさらうことができるかぎ爪はハイイログマの爪より大きいものもあり、雌は体重が最大11キロになることもある。「ファンタジー小説に出てきそうな鳥です」と、ミランダは言う。

オウギワシは翼の長さが比較的短く、密林の中を縫うように飛べる。ナマケモノや小型のシカを捕まえることも可能だ。写真はヤマアラシの死骸を巣に持ち帰るところ。(PHOTOGRAPHS BY KARINE AIGNER)

 食物連鎖の頂点に君臨する捕食者であるオウギワシは、獲物となる動物の個体数を抑えるという極めて重要な役割を生態系で担っている。「オウギワシを保護できれば、彼らが暮らす生態系の生物多様性も保護できます」と話すのは、パナマでオウギワシの保護を主導するNPO「ペレグリン基金」のリチャード・ワトソン会長だ。

 野生の個体数は不明だが、オウギワシが姿を消しつつあることは研究者の間では周知の事実だ。オウギワシはかつてメキシコ南部からアルゼンチン北部に分布していたが、1800年代以降に生息域が40%以上も縮小し、今では主にアマゾンでしか見られない。オウギワシの最大の脅威である農業や鉱業、開発に伴う森林伐採は、一向に衰える気配がない。2020年初めには、アマゾンで1時間に55ヘクタールの森林が消失していたとミランダは推定する。

 ミランダはブラジルのオウギワシを救う闘いの最前線にいる。彼によると、保護が効果的に進まなければ、オウギワシがブラジル国内の重要な生息地から姿を消すのは確実だ。そこは「森林破壊の弓状地帯」と呼ばれるアマゾン南東部を取り囲む広大な一帯で、森林が分断されている。ミランダは、森林は伐採するより残した方が利益になるとブラジルの人々に示せば、大規模な生息地の消失は防げると考えている。彼は最近、土地所有者にオウギワシと生息地を保護する意欲を起こさせるような、革新的なエコツーリズムのプログラムを立ち上げた。

次ページ:再び加速する森林伐採

ここから先は、「ナショナル ジオグラフィック日本版」の
定期購読者(月ぎめ/年間のみ、ご利用いただけます。

定期購読者(月ぎめ/年間)であれば、

  • 1 最新号に加えて2013年3月号以降のバックナンバーをいつでも読める
  • 2ナショジオ日本版サイトの
    限定記事を、すべて読める

おすすめ関連書籍

2020年10月号

アップデートされる恐竜/売られた少女たち/アマゾンのオウギワシ/米国の国立トレイル

研究技術の飛躍的な進展で、大きく塗り替えられようとしている恐竜像。特集「アップデートされる恐竜」で恐竜研究の最前線に迫ります。このほか、性的搾取を目的にした人身売買の闇を追った「売られた少女たち」など4本の特集を掲載。

定価:本体1,100円+税

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
誌面で読む