米オレゴン州ポートランドのウィラメット川。州のあちこちで起きている森林火災のせいで、濃い煙が立ちこめるなか、パドルボードで川を渡っている人がいる。(PHOTOGRAPH BY NATHAN HOWARD, GETTY IMAGES)

 米国オレゴン州の東端、アイダホ州との州境近くにジョセフという小さな町がある。9月11日金曜日に筆者がこの町を訪れたとき、朝の空は澄み切っていた。しかし、州東部の住民たちにとって、同州の南部と西部で猛威を振るう災害が迫りつつある兆候は明らかだった。

 筆者が入ったカフェのウェイトレスは、ワローワ山脈を覆うもやを指さした。いまや、山々はもやに覆われて青い影にしか見えない。西風が吹き始めたので、B&B(1 泊朝食付きの小規模な宿)や土産物店が並ぶ美しい町並みも、まもなく灰と煙に覆われるはずだ。このカフェでも、2日後の日曜日には外のテーブルに客を案内できなくなった。

 新型コロナウイルスのパンデミックが発生して6カ月。警察の暴力と人種差別への抗議が起きた夏。そして今、オレゴンは第三の危機の渦中にある。気候変動によって激しさを増した森林火災だ。

 数十カ所で発生した火災は、この一週間で州の4000平方キロメートル以上(東京都の面積の約2倍)の森を焼き尽くした。空は煙で覆われ、ほとんどの場所で空気質指数(AQI)が「極めて健康によくない」または「危険」となっている。

 ポートランド、ユージーン、ベンドといったオレゴン州の都市は、世界の大気汚染ワーストランキングを急上昇している。オレゴン州環境課は、12日に州全体に大気汚染注意報を出した。(参考記事:「激増する森林火災、火災に適応した森も再生できない恐れ」

オレゴン州アッシュランドにあるトレーラーハウスの駐車場。森林火災によって焼失し、道には捜索車両や救助車両が並んでいる。アッシュランドや近隣の町では、数百件の家が焼けている。(PHOTOGRAPH BY DAVID RYDER, GETTY IMAGES)

 ホテルや駐車場、スタジアムなどは緊急避難所になり、緊急事態管理室によると、4万人以上が避難命令を受けているという(当初は人口420万人の1割ほどにあたる50万人が避難対象と報じられていたが、それは誤りだった)。

 同じような事態は、ワシントン州やカリフォルニア州でも起きている。ワシントン州では3000平方キロメートル以上、カリフォルニア州では1万3000平方キロメートルほどが焼けた。専門家によると、気候変動がもたらす乾燥した暑い夏と強風の影響により、ここ数十年で最悪の森林火災が発生している。西海岸では、これまでに少なくとも35人が火災の犠牲になった。(参考記事:「一面がオレンジ色、カリフォルニアで相次ぐ森林火災」

オレゴン州フェニックス近郊で焼け跡を調べる男性。(PHOTOGRAPH BY CARLOS BARRIA, REUTERS)

 オレゴン州では、10人の犠牲者が出たことがわかっている。焼失面積は、この10年間の年平均の倍になった。ケイト・ブラウン州知事は、この事態を「一生に一度の出来事」と呼ぶ。フェニックスやタレントなど、同州の少なくとも5つの町が壊滅的な被害を受け、州の要請にもとづき15日には大統領による大規模災害宣言を受けた。

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