3700年前の古代カナン人宮殿、地震で廃墟化

遺跡を横断する溝や変形・崩落の跡から判明、現代の地震リスクも浮上

2020.09.16
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 ずれた壁、床のスロープと穴、割れた数々の巨大な瓶、ミクロな地質学的証拠、宮殿を真っ二つにする亀裂。これら奇妙に思われた点も全てつじつまが合い始めた。しかも、死海の堆積物の調査からは、紀元前1700年頃にこの地域で地震が発生したことがわかっている。ちょうど宮殿が放棄された頃のことだ。地震こそが唯一ありえそうな説明だった。

「これが考古学です」とクライン氏は言う。「ピースが徐々に1つに合わさっていきます。仮説を捨て、よりもっともらしい仮説を考え出し、最終的には自分の中のシャーロック・ホームズを呼び出さなければなりません。ありえない説は排除して、残ったものを検証するんです」

現代の地震リスクも浮上

 米ミズーリ大学カンザスシティ校の地質学者ティナ・ニエミ氏も、発掘された証拠は地震が原因だったらしいことを示していると同意する。ただし震源がどこだったのかについては、さらなる調査が必要だと話す。なお氏はテル・カブリ遺跡の発掘には関わっていない。

 震源は、現場近くにある小さなカブリ断層だったのか、もしくは40キロメートル東にある、より大きく危険な死海断層だったのか。宮殿内を走る亀裂の断面を発掘することで、そうした疑問への答えが見つかる可能性があるとニエミ氏は言う。

 ヤスール=ランダウ氏は、もはや地震説を疑っていない。「5年も取り組んできたプロジェクトですから、この問いに対する答えを得られて本当に良かったです」

 一方でラザー氏にしてみれば、今回の発見は、今この地に住む人々にとっての新たな脅威が発覚したということでもある。特に宮殿崩壊の原因がカブリ断層だったとすればなおさらだ。

「イスラエルで地震と言えば、皆すぐに死海断層を思い浮かべます」と氏は述べる。「つまり、死海断層から離れた場所には大した危険がないかのように思われているのです」

 ラザー氏によれば、カブリ断層は最近、活断層マップから除外された。しかし、地質学的に言えばほんの一瞬でしかない3700年前に、カブリ断層が地震を引き起こしたのだとすれば、同断層が今後再び活動する可能性は排除できない。

「災害の危険性を評価するにあたって重要な情報です。カブリ断層はもう一度、活断層として地図に掲載されるべきです」

参考ギャラリー:3600年前の高貴な墓を発見、古代カナン 写真6点
イスラエル北部の古代都市国家メギドの遺跡で、3600年前の王家のものと思われる墓が発見された。遺体のDNA解析によって、メギドの支配者層の出自が明らかになるのではないかと期待されている。(PHOTOGRAPH BY PETER LANYI, THE ISRAEL MUSEUM, JERUSALEM)

文=KRISTIN ROMEY/訳=桜木敬子

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