巨大銀河団に多数の高密度ダークマター、宇宙論揺るがす報告

現在標準とされる宇宙モデル「ラムダCDM」と大きく矛盾

2020.09.15
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 宇宙の残りの27%を占めているのがダークマターだ。このモデルによれば、ダークマターは質量を持ち、重力場を作れるが、自身で反応したり光を放出したりすることはなく、通常の物質とは重力でのみ相互作用する。

 ラムダCDMモデルを検証するため、イタリアのボローニャ天文台の天文学者であるマッシモ・メネゲッティ氏が率いる研究チームは、これまでに知られている最大級の銀河団について、物質が周囲の時空を歪ませる「重力レンズ」という現象を観測した。

 トランポリンの上に置いたボウリングのボールが周囲の布を湾曲させるように、物質は周囲の時空を歪ませる。歪んだ時空はまるで巨大なレンズのように通過する光を曲げるため、銀河や銀河団のような天体は、その後ろにある遠方の星の明るさや見え方を変えてしまう。(参考記事:「重力レンズ使った星の重さ測定に成功、ハッブル」

 メネゲッティ氏の研究チームは、なかでも銀河団の中にある小さくて強い重力レンズの効果に着目した。11個の銀河団の地図を作成し、小さくて強い重力レンズを数え上げたところ、予想の10倍以上の数が見つかった。この観測結果は、ダークマターのサブハローがコンピューター・シミュレーションの予測よりはるかに高い密度で銀河団の中に存在することを示唆しており、現在の標準とされるラムダCDMモデルと矛盾していた。

新しい宇宙理論への道が開けるのか

 宇宙の観測結果とラムダCDMモデルの間に矛盾が生じるのは、今回が初めてではない。しかし、米テキサス大学オースティン校の天体物理学者マイク・ボイラン・コルチン氏は、今回の食い違いは過去の検証で明らかになったものとはまるで違い、非常に意外な発見だとコメントしている。

 過去の検証では、はるかに小規模な天体を観測対象とし、ダークマターの密度は理論から予測される値より低いとされた。対して今回の発見では、銀河団全体のダークマターの密度がラムダCDMモデルの予想より高いとされたのだ。

「これまでとは正反対の発見です」とメネゲッティ氏は言う。

 理論と観測の間に、新たな対立を生じさせたものは何なのだろう? 銀河が形成される過程を、コンピューターモデルが完全に把握できていないのだろうか? あるいは、これほど巨大な構造をモデル化するための精度が不足しているのだろうか? 論文著者たちは、これらの要素が誤差の原因となりうることは当然考慮していたものの、今回の結果は誤差にしては大きすぎて説明できないのだと言う。

次ページ:「床にばらまいてある針を踏まない」ような難しさ

おすすめ関連書籍

ビジュアル 銀河大図鑑

この上なく美しく、どの本よりも詳しく、誰にでもわかりやすい。大人も子供も楽しめる、本格的な宇宙図鑑! 〔日本版25周年記念出版〕

定価:本体6,300円+税

  • このエントリーをはてなブックマークに追加