「ゴキブリは不快でいまいましい存在です。この気持ちは皆さんと同じです」とフル氏は話す。しかし彼は、同時に、ゴキブリは驚異的な生き物だと考え、本物のゴキブリのように体をつぶして素早く移動できるロボットを開発している。そのロボットには、ゴキブリの外骨格に着想を得た折り紙のようなデザインが採用された。
フル氏はゴキブリをはじめとする昆虫やクモなどの節足動物を、動物型ロボットの次なる“目玉”ととらえている。イモムシやタコからインスピレーションを得たほかのソフトロボットとは異なり、硬い外骨格と筋肉を持つ昆虫ロボットは柔軟性を維持したまま、素早く走ったり、ジャンプしたり、登ったり、飛んだりできる。
「彼らはどこへでも行くことができ、事実上、破壊できません」とフル氏は話す。ゴキブリは小さな空間を素早く移動することで、考え得るほぼすべての生息環境に広がり、競争に勝利してきた。ほかの昆虫もそれぞれの形で、このような体をつぶす驚異的な能力を持っているのではないかとフル氏は考えている。
動物の動きの物理特性を研究する米ジョージア工科大学のダニエル・ゴールドマン氏は、フル氏らの論文をきっかけに、「一見“硬い”動物に対する見方が変わりました」と述べている。
「変形可能な“硬い”部品で“柔らかい(柔軟な)”ロボットをつくるという発想は素晴らしいと思います。今後、全地形対応型ロボットの開発に関する考え方が変わるのではないでしょうか」
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