森と湖が広がる北の原野に環境破壊の恐れ、米国

トランプ政権が採掘権を復活、オオカミも暮らすバウンダリー・ウォーターズ

2020.09.22
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
手作りのカヌーで、米国ミネソタ州のバウンダリー・ウォーターズ・カヌー・エリア・ウィルダネスの湖を行く。水辺を取り巻くのは、黄金色に染まったアメリカカラマツ。(PHOTOGRAPH BY JIM BRANDENBURG, NATIONAL GEOGRAPHIC)

 米国ミネソタ州の「バウンダリー・ウォーターズ・カヌー・エリア・ウィルダネス」は、五大湖に隣接するスペリオル国有林の一部で、面積は石川県ほど(約4000平方キロメートル)。千の湖を有するこの森は、米国を代表する美しい自然保護区のひとつだ。

 その大自然に引き寄せられて、毎年15万5000人がここを訪れる。文明から完全に切り離されて、自然にどっぷりとひたれる点が魅力で、訪れた人は森の中にテントを張り、カヌーに乗って多様な野生生物を楽しむ。あまりの人気ぶりに、入園パスの予約は数年先まで埋まっているほどだ。(参考記事:「北米ミネソタ 春の1日1日」

 だが、その自然が今、脅威にさらされている。すぐ近くで、地下資源の開発が始まろうとしているのだ。地下に眠る銅とニッケルの採掘計画は長年論争の的となってきたが、もし採掘が始まれば、周囲の豊かな自然に回復不可能な損害を与える恐れがある。

バウンダリー・ウォーターズのすぐ北に、カナダとの国境がある。国境の向こう側は、オンタリオ州が管理するケティコ州立公園になっている。(PHOTOGRAPH BY JIM BRANDENBURG, NATIONAL GEOGRAPHIC)
ギャラリー:森と湖の美しき大自然、バウンダリー・ウォーターズ 写真20点(写真クリックでギャラリーページへ)
「50年前、ここで初めてハイイロオオカミの写真を撮影しました」と、ミネソタ州出身の写真家ジム・ブランデンバーグ氏は言う。「そんなチャンスはめったにありませんが、たまに出会うと、当時と同じように静かな興奮を味わいます」(PHOTOGRAPH BY JIM BRANDENBURG, NATIONAL GEOGRAPHIC)

忍び寄る開発計画

 バウンダリー・ウォーターズの地下には、電子機器から屋根の樋、航空機のエンジンまで、ありとあらゆる製品に必要な貴金属が豊富に眠っている。なかでも、ダルースの町からミネソタ州北東の端まで延びるスペリオル湖沿いのダルース複合岩体には、計40億トンの銅とニッケルが含まれている。チリの採鉱大手アントファガスタの子会社であるツインメタル社は、何年も前からここでの硫化銅採掘権を求めてきた。

[画像のクリックで拡大表示]

 だが、ツインメタル社の予定している採掘法は、金属が大量に流出して湖や川に回復不可能な損害を与えるとして反対する声が多い。バウンダリー・ウォーターズの自然保護運動を率いるグループ、ノースイースタン・ミネソタンズ・フォー・ウィルダネス(NMW)は、開発の中止を求める訴訟をいくつか起こしている。

 この運動に参加している生物多様性センターの上級弁護士マーク・フィンク氏は、カナダオオヤマネコやハイイロオオカミ、ヘラジカなどにとって、バウンダリー・ウォーターズは重要な生息地になっていると主張する。

次ページ:鉱山関連の悪影響は経済効果を上回る

ここから先は「ナショナル ジオグラフィック日本版サイト」の
会員の方(登録は無料のみ、ご利用いただけます。

会員登録(無料)のメリット

  • 1ナショジオ日本版Webの
    無料会員向け記事が読める
  • 2美しい写真と記事を
    メールマガジンでお届け

おすすめ関連書籍

世界一の動物写真

イギリスで50年続く、世界最高峰の写真賞「Wildlife Photographer of the Year」。その受賞作の中から、163枚を厳選して掲載した写真集。

価格:本体3,600円+税

  • このエントリーをはてなブックマークに追加