過去最大のブラックホール衝突を確認、科学者興奮

重力波で検出、合体前のブラックホールは理論上ありえない重さ

2020.09.05
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
今にも衝突しようとする一対のブラックホールの想像図。(ILLUSTRATION BY MARK MYERS, ARC CENTRE OF EXCELLENCE FOR GRAVITATIONAL WAVE DISCOVERY (OZGRAV))
[画像のクリックで拡大表示]

 今から70億年以上前、2つの巨大なブラックホールがお互いのまわりを周り、やがて衝突して合体した。この激しい衝突により、時空のゆがみが波となって宇宙に広がっていった。重力波である。

 2019年5月21日の早朝、はるか彼方で発生した重力波が地球に到達し、米国のLIGOとイタリアのVirgoという2つの重力波観測所でとらえられた。天文学者たちがその信号を分析したところ、これまで検出されたなかで最大の衝突と、理論上ありえないブラックホールについて、手がかりが得られた。(参考記事:「解説:ブラックホールの撮影成功、何がわかった?」

 GW190521と名付けられたこの重力波は、途方もない規模の衝突によって発生した。研究者の見積もりによると、それぞれ太陽の66倍と85倍の質量をもつ2つのブラックホールがお互いのまわりを回転したあとに合体し、太陽の142倍の質量のブラックホールを新たに形成したという。

 9月2日付けで科学誌「フィジカル・レビュー・レターズ」に発表された論文によると、今回の合体は、重力波をきっかけに発見された事象としてはこれまでで最大規模のものである。合体するブラックホールは、一瞬のうちに、太陽を構成する原子に含まれる全エネルギーの約8倍のエネルギーを重力波の形で放出した。このエネルギー量は、毎秒1000兆個以上の原爆を138億年間(つまり宇宙の年齢と同じだけの時間)爆発させるのとほぼ同じである。

「おそらく、私たちがこの宇宙で知っているなかで最大の爆発です」と、米カリフォルニア工科大学の天文学者マシュー・グラハム氏は言う。氏はLIGOやVirgoチームのメンバーではない。

 今回検出されたブラックホール合体は、いくつかの点で、科学者たちを興奮させている。一つは、合体でできたブラックホールが、私たちがまだ観測できていなかった不可解な穴を埋める存在だったこと。太陽質量の数十倍の「恒星質量ブラックホール」や、太陽質量の数百万〜数十億倍の「超大質量ブラックホール」はこれまでの観測で見つかっていたが、太陽質量の100〜10万倍の「中間質量ブラックホール」は見つかっていなかった。今回の合体でできたブラックホールの質量は太陽質量の約142倍で、初めて発見された中間質量ブラックホールとなった。

「これで決着がつきました。中間質量ブラックホールは実在するのです」と、LIGOチームに所属する米ノースウェスタン大学の物理学者クリストファー・ベリー氏は言う。

 しかし、ベリー氏らがより強い関心を寄せているのは、衝突によってできた新しいブラックホールではなく、最初の2つのブラックホールのうちの大きい方、すなわち太陽質量の約85倍のブラックホールだ。

「衝撃的です。この質量のブラックホールは理論的には存在しないことになっているからです」とベリー氏。

【動画】ブラックホールの基礎知識
わたしたちが暮らす銀河の中心では超大質量ブラックホールが渦を巻いている。ブラックホールの種類、ブラックホールはどうやって形成されるのか、目に見えないブラックホールがどうやって発見されたのかなどについて知ろう。(解説は英語です)

次ページ:想定外のブラックホール

ここから先は「ナショナル ジオグラフィック日本版サイト」の
会員の方(登録は無料のみ、ご利用いただけます。

会員登録(無料)のメリット

  • 1ナショジオ日本版Webの
    無料会員向け記事が読める
  • 2美しい写真と記事を
    メールマガジンでお届け

おすすめ関連書籍

ビジュアル 銀河大図鑑

この上なく美しく、どの本よりも詳しく、誰にでもわかりやすい。大人も子供も楽しめる、本格的な宇宙図鑑! 〔日本版25周年記念出版〕

定価:本体6,300円+税

  • このエントリーをはてなブックマークに追加