コロナワクチン接種が義務化されるとこうなる

ワクチン開発後、一部の専門家が予想する近未来の米国

2020.08.27
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
ワクチン接種の準備をする看護師。8月16日撮影。(PHOTOGRAPH BY DAVID CHESKIN, PRESS ASSOCIATION VIA AP)
[画像のクリックで拡大表示]

 大事な試合を観戦するため、あなたはチケットを握り締めて競技場に向かっている。しかし、競技場の周囲には長い列。原因は競技場の入り口だ。みんなが財布やポケットから小さな紙切れを取り出していて、入り口を通過するには、それを係員に提示しなければならない。コロナワクチン接種の証明書だ。

 いま、一部の専門家はこのような未来を予想している。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンを接種したと証明しなければ、スポーツを観戦することも、店でマニキュアを買うことも、仕事に行くことも、列車に乗ることもできない未来だ。

「ワクチン警察があなたの自宅のドアをたたき壊し、無理やり注射を打つようなことはないでしょう」と、ニューヨーク大学医学部の生命倫理学者アーサー・キャプラン氏は述べている。

 ただし、学童、軍関係者、医療従事者がある種の予防接種を義務づけられているように、キャプラン氏をはじめとする複数の医療政策専門家は、地方自治体や雇用主が予防接種を制度化あるいは強制する未来を思い描いている(編注:日本の法律では努力義務規定にとどまり、予防接種を受けるかどうかを最終的に決定するのは本人か保護者)。

 米国では、予防接種義務のほとんどは連邦政府によって発令される。予防接種の実施に関する諮問委員会(ACIP)が小児と成人のワクチン接種に関する提言を行い、州議会または市議会が最終決定を下す。

 予防接種の義務は公立学校の通学と関連づけられることが多く、50州すべてが公立学校の生徒に対し、医学的、宗教的、哲学的な理由がない限り、いくつかのワクチンを接種するよう義務づけている。

 従業員や一般市民など、成人の予防接種義務は、小児ほど広く課されていないが、決して前例がないわけではない。州や市が住民に予防接種を義務づけることは可能で、実際に行われている。

 例えば、マサチューセッツ州ケンブリッジでは1901年、21歳以上の全住民を対象に、天然痘の予防接種を義務づける法律が採択された。違反者には5ドルの罰金が科された。現在の物価に換算すると約150ドル(約1万6000円)だ。この法律に異議を唱える住民もいたが、裁判で敗訴した(米国で天然痘が最後に発生したのは1949年)。

次ページ:義務を果たした報酬は自由

ここから先は「ナショナル ジオグラフィック日本版サイト」の
会員の方(登録は無料のみ、ご利用いただけます。

会員登録(無料)のメリット

  • 1ナショジオ日本版Webの
    無料会員向け記事が読める
  • 2美しい写真と記事を
    メールマガジンでお届け

おすすめ関連書籍

2020年8月号

パンデミックと人類/インドの聖なる川/広島 75年目の記憶/チンパンジーの脅威/女性参政権への道

8月号の特集「パンデミックと人類」では、繰り返されるパンデミックの歴史から、私たちは何を教訓とすべきか考えます。シリーズ『人類の旅路を歩く』では「インドの聖なる川」をテーマにお届け。このほか、原爆投下75年を迎える「広島 75年目の記憶」など5本の特集を掲載。

定価:本体1,100円+税

おすすめ関連書籍

ビジュアル パンデミック・マップ

伝染病の起源・拡大・根絶の歴史

ささいなきっかけで、ある日、爆発的に広がる。伝染病はどのように世界に広がり、いかに人類を蹂躙したのか。地図と図版とともにやさしく解き明かす。

定価:本体2,600円+税

  • このエントリーをはてなブックマークに追加