ユネスコ世界遺産であるベルサイユ宮殿にある55個の噴水池の1つ、アポロンの泉水。(PHOTOGRAPH BY BERTHOLD STEINHILBER, LAIF/REDUX)
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 ベルサイユ宮殿ほど想像をかきたてる名所はなかなかない。この絢爛豪華な宮殿ではかつて、数々の陰謀やスキャンダルが繰り広げられた。フランスの「偉大なる世紀」と呼ばれる17世紀の貴族たちは、この場所で時の支配者の寵愛を受けようと策略を練り、1日にして莫大な富を得ることもあれば、全てを失うこともあった。

 2020年は、この宮殿の最も有名な住人、マリー・アントワネットとルイ16世の結婚から250周年にあたる。1770年に10代で結婚した2人は、あの華美な広間を歩いた最後のフランス王族となった。今も美しい姿をとどめるベルサイユ宮殿を築いたのは、その若きルイ16世の祖父、ルイ14世だった。(参考記事:「王侯気分に浸れる! ベルサイユを旅しよう」

 ベルサイユ宮殿は現在、ユネスコ世界遺産となっている。シャンデリアで飾られた「鏡の間」や華やかな王の居室がよく知られているが、なかでも特に称賛されているのが、広大な庭園にある55カ所の噴水池かもしれない。天に向かって放たれた水が、絵画のような風景に降り注ぐ。あるいは、水が池から池に飛び移るものもある。

 ルイ14世の時代、世界中のリーダーが憧れたベルサイユ宮殿だが、噴水に関しては、初めからこのように見事だったわけではない。実現には、2人のベルギー人エンジニアと、大胆不適なアイデアが必要だった。パリ中心部を流れるセーヌ川から、約18キロメートル離れた田園部のベルサイユまで、17世紀の技術を駆使して水を運ぼうというのである。

ルイ14世の大胆なアイデア

 17世紀後半、ルイ14世は、貴族たちを締め付けて王権を強化するため、地方の小村ベルサイユに政府機能を移し、父が所有していた狩猟用の館を「太陽王」にふさわしい宮廷に作り変えた。

 問題は、噴水の建造だった。大量の水を供給できるような水源から遠かったのだ。噴水は、当時の流行だっただけではない。「訪れた人にフランス王家の芸術的活力、権力、そして富を印象付けるという政治的な役割がありました」。ベルサイユ宮殿研究センターの研究員バンジャマン・ランゴー氏はそう説明する。

 フランス史上最も長く在位したルイ14世は、革新的な発想の持ち主だった。その1つの例が、ミディ運河の建設である。地中海と大西洋をつなぐこの運河によって、補給船が海賊に狙われにくくなったうえ、航海の所要時間が数日分は短縮された。科学を愛した彼はまた、科学アカデミーやパリ天文台を創設した。1715年には著名な天文学者ジャック・カッシーニとともに日食観察パーティーを開いている。

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