新型コロナ対策の屋外消毒は危険、動物の大量死も

中国、重慶では動物135体の死を確認、WHOは人体に有害と勧告

2020.08.21
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道路に消毒剤を散布する戦車型ロボット。3月16日、中国武漢で撮影。現在、専門家は健康上の懸念を理由に、屋外で消毒剤を散布すべきでないと勧告している。(PHOTOGRAPH BY BARCROFT MEDIA, GETTY IMAGES)
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 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが発生した当初、公衆衛生当局は、ウイルスの拡大を阻止する最も効果的な方法の一つは、人がよく触れるものの表面を消毒することだと考えていた。

 その結果、中国、韓国、フランス、スペインなどでは、大量の消毒剤が人口密集地域に散布された。トラック、ドローン、さらにはロボットが、道路や公園などの公共空間に消毒剤を浴びせた。

 インドネシアではドローンが上空から消毒剤をまき、スペインのある村ではトラクターが何百リットルもの漂白剤を公共のビーチに散布した。

 世界保健機関(WHO)や感染症の専門家はこれを受け、消毒剤の散布は効果がないだけでなく、化学物質を吸い込むことによる呼吸器への刺激など、健康被害をもたらす恐れがあると訴え始めた。たとえば漂白剤とアンモニアを混ぜた場合などは、有毒ガスが発生し、命に関わる可能性もあるとWHOは警告した。

 そして、8月、この議論に生物学者が参戦した。学術誌「Environmental Research」に発表された論文には、都市環境でこのような物質を無差別に使用すれば、野生生物に重大な危険をもたらすと記されている。

【参考ギャラリー】コロナと闘う不遇の女性ヘルスワーカーたち、インド 写真9点(クリックでギャラリーページへ)
検体採取チームが到着する前に、ラクナウのホットスポットに消毒剤が散布された。(PHOTOGRAPH BY SAUMYA KHANDELWAL)

 都市部での消毒を最初に始めたのは中国だった。1月に消毒を開始してすぐ、動物が被害を受けているという報告が入り始めた。2月、南西部の大都市、重慶の森林局が調査結果を発表した。国営通信社の新華社によれば、イノシシ、チョウセンイタチ、クロウタドリなど、少なくとも17種135の個体が消毒剤にさらされた後に命を落としたという。

 論文著者の一人である河北師範大学の生態学教授ドンミン・リー氏は、消毒剤は主に次亜塩酸ナトリウム、塩素、漂白剤で構成され、これらの成分は「陸生動物と水生動物の両方に急性毒性」があると説明する。

 論文は重慶森林局の調査を分析したもので、研究チームが自ら動物の死体を調べ、死因を確認したわけではない。それでも、動物たちの死は、「消毒剤の過剰な使用が都市に暮らす野生生物の生息環境を汚染する」憂慮すべき証拠だと、リー氏は考えている。

 研究チームは現在、都市部での消毒剤の散布を規制するよう世界のリーダーたちに呼び掛けている。科学界の見解が反映されていないというのがリー氏らの主張だ。(参考記事:「消毒はせっけんでOK、漂白剤よりいい理由とは、新型コロナ対策」

次ページ:消毒剤の散布、人体にも生態系にも影響

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