驚きの「ブーメラン」地震、初の報告、衝撃波生む超高速で逆戻り

逆走は東北地方太平洋沖地震や熊本地震の余震で起きていた可能性も、筑波大ほか

2020.08.20
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 2010年のある春の日の午後、メキシコのバハカリフォルニア州をマグニチュード7.2の地震が襲った。クカパーの先住民の長老であるロザリオ・ガルシア・ゴンザレス氏は、地震発生時に自宅で目にした驚きの光景を、科学者に次のように語った。地震によって地割れが発生し、まるで荒野を自動車が高速で走り抜けるように砂ぼこりが舞い上がった、と。

 ところが不思議なことに、自動車が走ったかのようなその向きは、地震とは真逆に見えたという。

 通常、地震で破壊される地割れの先端は、紙を破るように一方向へだけ進むものだ。しかしゴンザレス氏によると、科学者が考えていたのとは正反対に、砂ぼこりは震源地の方へ向かっていたようだったという。

 この目撃証言は科学者たちを興奮させた。当時、メキシコのエンセナダ科学研究高等教育センターで博士号の取得を目指していたオーランド・テラン氏は、驚きの証言だったと感想を述べている。しかし、その日正確に何が起こったのかはわからない。というのも、ゴンザレス氏が見たものは地震データからは確認されなかったからだ。

 だが、最近になって筑波大学を含む国際的な研究チームが別の場所で発生した「ブーメラン」地震の破壊過程をとらえることに成功し、8月10日付けで学術誌「Nature Geoscience」に論文を発表した。

[画像のクリックで拡大表示]

 それは、西アフリカの国リベリアから約1000キロの沖合、大西洋の底にある海嶺で発生したマグニチュード7.1の地震だ。地震はまず地下深くから上および東方向に進み、その後向きを変え、断層の上部を驚異的な速さで逆戻りした。

 地震のひどい揺れは通常、地震が伝播する方向に集中する。しかし、ブーメランのように戻ってくる「逆伝播破壊」の場合、被害がより広い範囲に拡大する恐れがある。

【動画】地震の基礎知識
地震の背景にある地球物理学や、観測方法、過去の地震などについて学んでみよう。(解説は英語です)

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