ワニやフクロウの涙は人間とどう違うのか、研究

動物7種の涙を分析、鳥や爬虫類についての調査は初

2020.08.22
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クチヒロカイマンは何時間もまばたきをしない。この点が新しい研究のきっかけになった。(PHOTOGRAPH BY ARIANNE P. ORIÁ)
クチヒロカイマンは何時間もまばたきをしない。この点が新しい研究のきっかけになった。(PHOTOGRAPH BY ARIANNE P. ORIÁ)
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 涙を流す生きものは人間だけと思われるかもしれない。しかし、涙は泣くためだけにあるのではない。健全な視覚を保つため、爬虫類や鳥類を含め、あらゆる脊椎動物が涙を分泌する。

 2020年8月、学術誌「Frontiers in Veterinary Science」に発表された研究によると、動物の涙も人間の涙とそう変わらないようだ。実際、両者の涙の化学的な組成はよく似ているという。他の動物の涙の組成や環境への適応を調べることで、人間の目の病気やその治療法に役立つ可能性もある。

 これまで、涙の詳しい研究が行われてきたのは、イヌやウマ、ラクダ、サルなど一部の哺乳類だけだ。今回の研究ではブラジルの獣医師グループが、鳥類や爬虫類について初めて涙の詳しい分析を行った。調査の対象としたのは、鳥類4種(ルリコンゴウインコ、アオボウシインコ、メンフクロウ、オオハシノスリ)と爬虫類3種(クチヒロカイマン、アカアシガメ、アカウミガメ)の計7種である。

メンフクロウから涙を採取する。(PHOTOGRAPH BY ARIANNE P. ORIÁ)
メンフクロウから涙を採取する。(PHOTOGRAPH BY ARIANNE P. ORIÁ)
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 涙は、涙腺やそれに似た腺から分泌され、目の表面に薄い膜を作る。この膜は粘液層、水層、油層で構成されている。粘液層は眼球表面を覆い、涙液を角膜表面にとどめる役割を持つ。水層は重要なタンパク質やミネラルが含まれる体液から成り、油層は目が乾くのを防いでいる。

 涙は泣くこと以外にも重要な役割があると、米アイオワ州立大学の動物眼科医ライオネル・セバーグ氏(今回の研究とは無関係)は語る。目の表面を潤して滑らかにしたり、ごみやほこりを取り除いて視力を保つだけでなく、目を感染から守ったり、角膜に栄養を与えたりする。「今回のようにさまざまな種について涙を調べるのは、大変興味深いことです」と同氏は言う。

動物の涙を分析するには?

 今回の研究を率いたのは、ブラジル、バイーア連邦大学の獣医師アリアンヌ・ポンテス・オリア氏。ワニの仲間であるクチヒロカイマンは、最大で2時間まばたきをせずに目を開きっぱなしにできるが、ヒトは10秒から12秒ごとにまばたきをする。まばたきをすることで、涙は眼の表面にまんべんなく行き渡る。これによって水分が保たれ、視力が安定する。

 オリア氏らは、クチヒロカイマンをはじめ、ブラジル国内の動物保護施設や飼育業者で飼育されている鳥や爬虫類65体から涙を採集。10人の健康な人間のボランティアからも涙を集めたうえ、涙に含まれる電解質(ナトリウムや塩素など)やタンパク質などを測定した。

参考ギャラリー:クローズアップで見る動物の目 多様性に驚き、写真20点(画像クリックでギャラリーへ)
参考ギャラリー:クローズアップで見る動物の目 多様性に驚き、写真20点(画像クリックでギャラリーへ)
動物で目の構造は違う。人間が見るのと違う世界が見えるのだろうか? 20点の写真でその多様性に富んだ瞳を見てみよう。(写真=DAVID LIITTSCHWAGER)

次ページ:涙の結晶は個性的だった

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