解説:「史上最小の恐竜」は実はトカゲだった、論文を撤回

第2の化石から判明、「視野が狭かった」と著者

2020.08.18
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およそ9900万年前、現在のミャンマーにあたる場所で、垂れ落ちる樹脂にオクルデンタビス・カウングラアエ(Oculudentavis khaungraae)が閉じ込められる。この謎めいた生き物は、新たな研究でトカゲに分類された。(ILLUSTRATION BY STEPHANIE ABRAMOWICZ)
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 2020年3月、ハチドリほどの大きさの9900万年前の生物オクルデンタビス(Oculudentavis khaungraae)は、「史上最小の恐竜化石」として報じられ、世界中で話題となった。だが、新たに報告された化石から、この生物は実際には恐竜でなく、風変わりなトカゲの仲間である可能性が高いことがわかった。

 最初に報告されたオクルデンタビスの化石は、琥珀に閉じこめられた頭骨で、学術誌「Nature」の2020年3月12日号で発表されたほか、ナショナル ジオグラフィックを含む各メディアが取り上げた。

 頭骨の長さは14ミリメートルで、トカゲのような目をもつ。科学者たちは当時、これを恐竜の系統に連なる最初期の鳥の仲間と考えた。史上最小の恐竜化石として大きな話題になったのはそのためだ。(参考記事:「琥珀の中に史上最小の恐竜化石、異例ずくめ」

 ただし、この化石で残っていたのは頭骨のみであり、体の他の部分がどうなっているかは不明だった。その後、別の古生物学者チームが、新たなオクルデンタビスの化石を特定。こちらは、頭骨以外にも体の一部が残っていた。この化石によって、オクルデンタビスが実際にはトカゲであったことが確実となった。とはいえ、トカゲとしてはかなり変わっている。

「大きな目と、とさかのようなものが付いた鼻のある、奇妙な生き物です。一見したところ、トカゲには見えません」と、今回の化石について報告した英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の古生物学者スーザン・エバンズ氏は語る。「変わってはいますが、トカゲです」

カットと研磨を施されたこの琥珀の塊の中に、世界で2つ目のオクルデンタビスの化石が含まれている。頭部以外の部分が含まれるものとしては初めての標本だ。(PHOTOGRAPH BY ADOLF PERETTI, PMF)
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 英語の「dinosaur(恐竜)」という言葉はギリシャ語の「恐ろしいトカゲ」から来ているが、実際にはトカゲと恐竜は、およそ2億7000万年前に分岐している。オクルデンタビスのもつ大きな目と、顎の骨格からは、彼らが昼行性であったことと、小さな虫などを弱い力で、しかし素早くとらえていたことが示唆される。

 つまり、オクルデンタビスと同時代の鳥たちは、同じような虫を食べていたか、あるいは同じような森林の中で生活していたのかもしれない。進化によって、オクルデンタビスと、遠い親戚である鳥たちは、徐々に似た形態になっていった。海洋哺乳類が魚のような流線形になったのと同じだ。

「オクルデンタビスの頭骨は、既に知られているどんなトカゲのものとも異なっており、収斂進化の驚くべき例と言える」。査読前の論文で、研究者たちは今回の化石をそう表現している。

 新しいオクルデンタビスの化石に関する報告は、学術誌「eLife」に投稿されているものの、まだ査読が済んでいない。著者たちによれば、2つ目の標本についての噂が広まっていたため、査読前論文を投稿するサイト「bioRxiv」で、早めに調査結果を公表したとのことだ。「憶測が広まるのを止めるため、(査読前の原稿を)発表したほうがいいのでは、という結論に至りました」とエバンズ氏は話す。

次ページ:最初の論文は撤回

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