ロシア製ワクチンに「重大な懸念」 米国研究所長

米国新型コロナ対策の第一人者、ファウチ国立アレルギー感染症研究所長が見解

2020.08.19
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ワクチンバンクを保存機器から取り外す検査技師。2020年8月6日、ロシアの国立ガマレヤ疫学・微生物学研究所とロシア直接投資基金が開発するCOVID-19ワクチンを製造する、モスクワにある同研究所で。(PHOTOGRAPH BY ANDREY RUDAKOV, BLOOMBERG VIA GETTY IMAGES)
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 ロシアが新型コロナウイルスのワクチンを承認し、供給体制を整えているとのモスクワの報道に対し、米国で新型コロナ対策をけん引する国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のアンソニー・ファウチ所長は、「ワクチンを作り上げることと、それが安全かつ有効であることを証明することは別」との見解を示した。

 これは、ナショナル ジオグラフィックが8月13日に独占放送したイベント「Stopping Pandemics(パンデミックを止める)」の基調インタビューの中で、ファウチ氏が発言したもの。

「ロシアが実際にワクチンの安全性と有効性を決定的に証明したのならよいですが」と、ファウチ氏は司会を務めたABCニュースのデボラ・ロバーツ記者に語った。「それは大変疑わしいと考えています」

ロシアのワクチンに関するファウチ氏のコメント
【動画】NIAIDのアンソニー・ファウチ所長は、ロシアが新型コロナワクチン「スプートニクV」を承認したことに対する見解を示した。(解説は英語です)(NATIONAL GEOGRAPHIC MEDIA)

 ロシアはこの夏中、ワクチン候補の開発が急速に進んでいるとほのめかし続けてきた。このワクチン候補は、1960年にソ連が打ち上げた宇宙船にちなんで「スプートニクV」と名付けられた。5月にはワクチンの開発を行っているモスクワの国立ガマレヤ疫学・微生物学研究所の所長が、自分を含む研究員らが被験者となって同ワクチンの試験を開始したと述べ、その1カ月後には被験者76人を対象とする第1相臨床試験が開始された。

 しかし、臨床試験では通常3つの段階を踏んで医薬品の安全性、有効性、および最適な用量を確認するが、ガマレヤ研究所はいまだに臨床試験の結果を公表していない。また、動物モデルを用いた研究や、培養した細胞の実験についても一切発表はない。(参考記事:「新型コロナワクチン、注目の有力候補はこの7つ」

2020年7月31日にワシントンD.C.で開かれた米下院小委員会の公聴会に、MLBワシントン・ナショナルズのマスクを着用して出席したNIAIDのアンソニー・ファウチ所長。(PHOTOGRAPH BY KEVIN DIETSCH, UPI, BLOOMBERG VIA GETTY IMAGES)
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 このように情報公開がされていないにもかかわらず、ロシアのプーチン大統領は、同国の保健当局がこのワクチンの一般市民向け使用を承認したことを明らかにした。プーチン氏は8月11日の政府声明で、「我々は、この重要な第一歩を踏み出した人びとに感謝しなければならない。ロシアにとっても、全世界にとっても非常に重要な一歩だ」と述べている。

次ページ:安全性と有効性への懸念

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