ボリビアとペルーにまたがるティティカカ湖に潜る研究チームのメンバー。インカ帝国の人々はティティカカ湖を神とあがめ、捧げものを湖底に沈めていた。人がいけにえにされていた可能性もある。(PHOTOGRAPH BY T. SEGUIN, UNIVERSITÉ LIBRE DE BRUXELLES/ANTIQUITY PUBLICATIONS LTD)
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 16世紀初頭に栄華を極め、アンデス山脈沿いに現在のコロンビアからチリまでの一帯を征服していたインカ帝国にとって、ティティカカ湖は神聖な場所だった。現在のボリビアにあるティティカカ湖南部の「太陽の島」に寺院などを80以上建造し、インカ帝国はさまざまな儀式を行った。その創造神話によれば、太陽の島に存在した1つの岩から、太陽神と最初の祖先が現れたという。祖先たちは熱心に祈り、ティティカカ湖に捧げものを沈めた。

 8月4日付けで学術誌「Antiquity」に発表された論文は、インカ帝国の信仰体系について新たな洞察をもたらしている。インカ帝国の信仰には政治や豊穣祈願、海の女神ママ・コチャのほか、世界最大級の湖を濁らせる血の儀式が関わっていた可能性が高い。

 国際的な考古学者のチームはボリビアとペルーにまたがるティティカカ湖で水中調査を行い、水深約5.5メートルの岩礁で、安山岩という地元の火山岩でできた箱を発見した。箱の寸法は35×25×16.5センチほど。岩には捧げものを入れるくぼみがつけてあり、丸みを帯びた石でふさがれていた。500年以上前に沈められ、そのままの状態を維持していたようだ。

 箱の中には、小さな金の薄板を円筒状に丸めたものとウミギクでできたリャマの像が入っていた。ウミギクは二枚貝の一種で、サンゴ色の貝殻にとげが生えており、希少性が高い。リャマは荷物を運ぶ動物として重宝されていた。金の円筒はチパナのミニチュアだと、研究チームは推測している。インカ帝国の貴族が右腕にはめていたブレスレットだ。

聖なる湖への捧げものに込められた意味

 ティティカカ湖でのこうした発見は今回が初めてではない。1541年の記録によれば、財宝のうわさに引き寄せられたスペインのコンキスタドール(征服者)が探索中に10人溺死している。現代でも1950年以降、海洋探検家として有名なジャック・クストーを皮切りに、ダイバーたちがティティカカ湖の調査を続けてきた。(参考記事:「クストー生誕100年、その功績と影響力」

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