7月23日のフランス、パリ。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック対策としてソーシャルディスタンスを確保するため、カフェの外に木製パレットで即席のテラスがつくられている。(PHOTOGRAPH BY CHRISTOPHE ARCHAMBAULT, AFP, GETTY IMAGES)
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 4月のある朝、「ディストピア(ユートピアの反対)」のような体験をしたパリの友人から電話がかかってきた。自宅から3キロほど散歩して、広大な森林公園バンセンヌの森に入ろうとしたとき、頭上にドローンがやって来たという。ドローンは命令した。「自宅に戻ってください」。友人は走って帰宅した。

 2020年、新型コロナウイルス危機が到来し、ごく普通の生活が奪われた。フランスはウイルスの蔓延を抑えるために厳格なロックダウンを実施し、国民の社会生活を制限した。それから数カ月。フランスは不安に打ち勝つ方法を見つけ出し、夏休みの一部を取り戻そうとしている。

 当初、個人の外出は1キロ以内に制限され、さらに不可欠な外出のみという制限が加わった。友人がドローンに遭遇したのはこのときだ。その後、感染者数が目に見えて減少し、外出制限は緩和された。

 もちろん、フランスは完璧とは程遠い。世界で7番目に多い3万人超の死者を出し、人々が夏休みをビーチで過ごしている今、感染者数は再び増加している。政府は再流行を警戒し、国際的な監視機関は、第二波は時間の問題だと警告している。(参考記事:「4月のフランス、コロナ被害者を支える葬儀人」

 6月中旬、フランス南部と北西部でアウトブレイクが発生し、マスク着用の義務が拡大された。フランス全土を対象に、店舗に入る際はマスクで鼻からあごまで覆うことが義務づけられ、違反者は135ユーロ(約1万6000円)の罰金を科されることになった。

 それでも、フランスは、特に観光経済の柱であるパリは、自信に満ちた態度で第一波を乗り越えた。ギャラリーは営業を続け、多くの自転車が自転車専用道路を行き交い、レストランはソーシャルディスタンスを確保しながら、人々に社交の場を提供している。

 フランス当局が外国からの訪問者の追跡をやめるとすぐ、英国ロンドン在住の私はユーロスターに飛び乗った。訪れたパリは、ウイルスを巡る混乱や政治的な怒りからは驚くほど無縁に見えた。

 パリのバス停や地下鉄駅には手指消毒剤が置かれている。通りには手洗いを推奨するポスターが貼られている。地下鉄駅に入る人は全員、マスク着用が義務づけられている。バーテンダーもウェイターもシェフもマスクを着用している。週末には混雑も見られるが、もめごとはめったに起こらない。

参考ギャラリー:新型コロナで続く都市封鎖、「不気味なほど空っぽ」なパリ 写真14点(画像クリックでギャラリーへ)
新型コロナにより都市封鎖となった、2020年3月のフランス、パリの不気味なくらいの光景を撮影した。(Photograph by William Daniels, National Geographic)

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