家庭ごみやプラスチックなどで汚染されたフィリピンのマニラ湾で遊ぶ子どもたち。(PHOTOGRAPH BY RANDY OLSON, NAT GEO IMAGE COLLECTION)
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 海洋プラスチックごみの年間流出量は、このまま手を打たないと2040年に2900万トンになるとの最新の予測が発表された。2016年に比べて約3倍、現在の2倍以上の流出量だ。

 この予測は、米国の非営利団体「ピュー慈善信託」と英国の環境シンクタンク「システミック」が2年かけてまとめ、このほど発表した報告書『Breaking the Plastic Wave(プラスチックの波を破壊する)』によるもの。驚くべき数字は、これまで世界が取り組んできたプラスチック削減策が、いかにうまくいっていないかを浮き彫りにしている。だが報告書は同時に、海に流出するプラスチックの量を大幅に削減するための大胆な計画も提示している。

 自然界で分解されないプラスチックがどれだけ海に蓄積しているのかは、誰にもわからない。2015年に出された最も正解に近いと思われる数字は、約1億5000万トンだった。この数字が正しいと仮定すると、このまま何もしなければ2040年には6億トンに膨れ上がるとみられている。(参考記事:「プラスチックごみに翻弄される動物たち 写真10点」

現在のプラスチック製造・消費・処理に何も変化がなければ、海に流出するプラスチックの量は、2040年までに年間3000万トン近くに増加する。(Jason Treat, NGM STAFF, SOURCEs: Pew charitable trusts; Systemiq)
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 今回の報告書が提案するのは「システム変革シナリオ」。世界のプラスチック産業をリユースやリサイクルといった循環型経済へ移行させ、この産業全体を再構築することだ。うまくやれば、既存技術だけで、20年後におけるプラスチックごみの推定流出量を最大80%削減できるという。だが、対策の開始が5年遅れると、さらに8000万トンが海に流出すると警告する。(参考記事:「プラスチックごみ問題、アジアの責任は?」

最新の研究によると、人間とプラスチックとの関わり方を変えるシステム全体の改革によって、2040年までに流出量が82%削減され、6000億ドル(約63兆円)がかかる。政府や産業界がこれらの変化を受け入れ、実行するかは不透明だ。(Jason Treat, NGM STAFF, SOURCEs: Pew charitable trusts; Systemiq)
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 システム変革シナリオには6000億ドル(約63兆円)がかかるというが、20年間何もしないでいる場合に比べると、700億ドル(約7兆3500億円)節約できる。主にバージンプラスチック(リサイクル素材を使わないプラスチック)の使用を減らせるためだ。「システム全体の問題は、システム全体の変化を必要とします」と、報告書は指摘する。

 これまでも、海洋プラスチック問題には数多くの提言がなされてきたが、今回の報告書はプラスチックごみ問題が重大な局面を迎えたこの時期に発表されたことに意味がある。

 今や海洋プラスチック汚染は世界の環境問題の最優先課題に上り、ほぼすべての国で使い捨てプラスチック削減運動が巻き起こっている。一方で、それとは逆行するように、世界のプラスチック生産量は2030年までに40%増加するとみられ、プラスチック製造工場の建造に巨額の投資が行われている。(参考記事:「汚れたプラスチックごみの輸出規制、動揺する米国」

 これは、プラスチック削減に向けた対策が追い付いていないことを示している。報告書によれば、現状の産業界と政府の公約が2040年までに達成できたとしても、プラスチックごみの海への流出量はわずかに減らせるにすぎない。

産業界と政府による公約は、2040年までに海への流出量を年間7%削減するというものだ。(Jason Treat, NGM STAFF, SOURCEs: Pew charitable trusts; Systemiq)
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「私たちは今、岐路に立っています」と、環境保護団体オーシャン・コンサーバンシーの海洋ごみプログラムを監督するニコラス・マロス氏は言う。「産業界は『もっと努力する』と言い、政府は措置を講じてきました。けれどこの報告書を見れば、今の努力だけでは十分でないと気づくでしょう。世界は誤った方向へ向かっています。私たちは、プラスチックとの付き合い方を根本から考え直さなければなりません」(参考記事:「クジラの胃に100kgのごみ、なぜプラごみ食べる?」

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