年間のプラスチックごみ流出、2040年に倍増

調査機関がシミュレーション、大胆な解決策も提案

2020.08.01
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産業界を動かせるデータを求めて

 プラスチック削減対策に欠けているものは、産業界の意思決定を導く経済データであると結論付けたピューは、2018年にこのプロジェクトを開始した。具体的な数字がなければ、情報に基づく選択をするよう企業を説得することはできないと、ピューの海洋プラスチックと沿岸湿地プログラムを率いるサイモン・レディ氏は考える。「未来の地球がどんな状態であってほしいかを、私たちは決めなければなりません。けれど、そのために必要なデータを持っていませんでした」

フィリピン、ヴァレンズエラのプラスチック処理工場に集められた大量のペットボトル。(PHOTOGRAPH BY RANDY OLSON, NAT GEO IMAGE COLLECTION)
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 そこでチームは、英国のオックスフォード大学が作成した経済モデルを使って予測を立てた。レディ氏は、このモデルを様々な地域におけるプラスチックごみ削減へのロードマップとして使えると話す。政府や企業がこのモデルにごみデータを入力すると、それぞれの地域に合わせた評価や解決案が示される。この研究には、英国のリーズ大学、エレン・マッカーサー財団、コモン・シーズなどから、最終的に100人以上の専門家が関わった。

 モデルは、どんな対策をすればどれだけコストがかかり、どれだけ海に流出するプラスチックの量を減らせるかを算出している。例えば、プラスチックの無駄づかいをやめ、容器を使い回すなどで30%減、プラスチックのかわりに紙袋などを使う「代替策」で17%減といった具合だ。

リサイクルのみの戦略では、年間の流出量はさらに減少するが、1400億ドル(約14兆7000億円)のコストが余分にかかる。(Jason Treat, NGM STAFF, SOURCEs: Pew charitable trusts; Systemiq)
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プラスチックの使用削減と代替原料に焦点を当てた戦略は、流出量を52%削減するが、代替原料不足で最大8500億ドル(約89兆3600億円)のコストがかかる。(Jason Treat, NGM STAFF, SOURCEs: Pew charitable trusts; Systemiq)
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「石油は地中に埋めたままにしておいて、既にシステムに出回っているプラスチックを循環させていかなければなりません」と、再利用経済への移行を目指す非営利団体エレン・マッカーサー財団の最高経営責任者アンドリュー・モーレット氏は語る。

プラごみが世界を埋め尽くした理由

 プラスチックごみが増える大きな要因は、世界人口の増加とプラスチック製造量の増加にある。特に開発途上国を中心に、1人当たりのプラスチック使用量は増加する一方だ。例えばインドでは、中産階級が拡大する一方で、ごみの収集体制が確立していない。また、安価で低品質のバージンプラスチック製品が増えているが、それらはリサイクルが困難で、ごみ問題に拍車をかけている。

 バージンプラスチックの使用量を減らすにはリサイクルが最も効果的な方法だが、そのためにはまず回収作業が必要になる。ところが現在、世界の20億人が回収サービスにアクセスできないでいる。その数は、2040年までに2倍の40億人に増えるとみられており、その多くは途上国の農村部に住む人々だ。

 この格差を埋め、2040年までにすべての人に回収サービスへのアクセスを提供するには、今すぐに開始したとしても毎日新たに50万人へ提供を始めなければならない。とうてい不可能と思われる数字だが、世界規模でのごみ削減がどれほど大変な問題なのかを示すため、今回の報告書に含められた。

「まず無理でしょうね」。システミックのプロジェクトマネージャー、ヨニ・シラン氏は言う。「もしそれができないのであれば、もっと賢いシステムを作り出すことです」

回収と廃棄だけに焦点を当てた戦略は流出量を55%削減するが、ごみ回収サービスを必要とする人口は2040年までに40億人に達し、5100億ドル(約53兆6000億円)がかかる見込み。(Jason Treat, NGM STAFF, SOURCEs: Pew charitable trusts; Systemiq)
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 新型コロナウイルス感染症の世界的流行が、事態をさらに悪化させた。原油価格の急落で、バージンプラスチックの製造価格はこれまでにないほど低下した。消費者はウイルスに敏感になり、商品を保護する使い捨て包装プラスチックの需要が急増した。

 だが、希望の光も見えると、システミックの共同創立者であるマーティン・スタッチー氏は話す。コロナ以前、産業界ではシステム全体の変革はあまりに規模が多すぎて、時間も金もかかるという根強い抵抗があった。だが、コロナ流行でトイレットペーパーや消毒液などの商品があっという間に不足し、供給システムは混乱し、物流が根本からひっくり返されたことで、そうした主張が誤りであったことが明らかになった。

「サプライチェーンがいかに迅速に変わり、体制を立て直せるかが示された出来事です。これまで信じられなかったことが、信じられるようになりました」と、スタッチー氏は言う。

人々の心をつかむ

 プロジェクトを監督したピュー慈善信託のウィニー・ラウ氏は、業界大手からの抵抗は気にならないと話す。「私たちの研究結果がどんなに素晴らしくても、すべての人の心を変えることはできません。私たちの目的は、この問題解決のカギを握る人々の心を変えることです。その人たちがリードし、企業の新たな基準を作ってくれるでしょう。あとは、私たちの努力次第です」

同プロジェクトの完成を祝って7月にロンドンで開かれた式典には、消費財メーカーの大手ユニリーバ社の最高経営責任者アラン・ジョープ氏が来賓として招かれていた。同社は昨年、バージンプラスチックの使用を半分に減らし、販売数以上のプラスチックを回収して加工するための支援を行うと約束した。こうした取り組みが出発点となるだろう。

参考ギャラリー:プラスチックごみに翻弄される動物たち、写真10点(画像クリックでギャラリーへ)
包装フィルムを使って身を隠すカニから、ごみの山をあさるハイエナまで、人間が捨てたプラスチックごみに翻弄される野生生物の姿をとらえた。 (PHOTOGRAPH BY THOMAS P. PESCHAK, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)

文=LAURA PARKER/訳=ルーバー荒井ハンナ

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