カメラトラップを使った調査は「地域規模ではテストされてきましたが、今回の研究では各地がうまく協調することで、世界規模の評価ができました」と、英ランカスター大学の海洋生物学者であるニック・グレアム氏(今回の論文とは無関係)は語る。「サメは簡単に乱獲されてしまいます。多くの国では、ダイビングをしてもサメに遭遇することはまれです」
個体数回復のカギを握るのは?
サメは世界に500種ほどが生息しているが、その3分の2が乱獲の脅威にさらされている。多くは肉やヒレが目当てだが、サメが目的でない漁網や延縄にかかってしまうことも少なくない。こうした「混獲」による被害も深刻だ。(参考記事:「若いホホジロザメの主な死因は漁網、研究成果」)
だが、まだ希望はある。「海域を漁業から完全に守れば、海洋生物やサメが戻ってきます」と、サラ氏は言う。たとえば、メキシコのカボ・プルモでは、周辺の海域を保護することで、サメを含む豊かな海洋生態系が戻っている。(参考記事:「住民が蘇らせた魚の楽園、メキシコ」)
健全な数のサメがよみがえらせるには、保護区を設けるだけでなく、漁獲制限を設ける、サメを傷つける可能性のある漁具を禁止するなど、漁業管理政策も重要だ。グレアム氏は、今回の研究はこういったアプローチの重要性を浮き彫りにしていると述べる。
さらにグレアム氏は、サメ漁を綿密に規制したり、混獲されるサメを減らすことができれば、数が回復する可能性は高まるとも言う。
コミュニケーションとアウトリーチもまた不可欠だと、米ノバサウスイースタン大学でサメを研究するカーリー・ジャクソン氏は話す。「多くの国がサメの肉を頻繁に消費していますが、それらの国に対して『間違っている』と伝えるのは決して良いことではありません」(参考記事:「フカヒレ販売禁止に賛否、サメを守れるのか、米国」)
健全な海にとってサメの存在がどれほど重要か。それを世界中の人々に理解してもらうことは重要な一歩だ。その一環として、サメ漁からエコツーリズムに切り替えて、サメやサメがすむサンゴ礁を観光資源として活かすことも考えられるだろう。
サラ氏はこう話している。「そうすれば、地元の人々にもメリットになります。サメ漁はとったサメを一度売ってしまえばそれで終わりですが、エコツーリズムではダイビング客に何度でもサメを楽しんでもらえるのですから」
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