珍しい灰青色の毛をもつ「氷河クマ」に不安な未来

DNA使い分布を解明、氷河とともに消える可能性も

2020.07.28
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木の根元でくつろぐグレイシャー・ベア、2018年、米国アラスカ州トンガス国有林で。(PHOTOGRAPH BY LANCE NESBITT)
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 米国アラスカ州ではまれに、灰青色のクマが出没する。

「グレイシャー・ベア(氷河クマ)」と呼ばれるこのクマは、個体数が少なく、めったに見られない。分類的にはアメリカクロクマだが、その毛色は銀色を帯びた黒いものから、灰青色のものまでいる。

 専門家のタニア・ルイス氏も、目撃した経験は数えるほどだ。彼女はアラスカ南東部に位置するグレイシャーベイ国立公園・自然保護区の野生動物学者として長年、このクマを調査してきた。

「地球上のほかの場所では見られない、珍しい色です。そこに物語があるのです」と、ルイス氏は語る。

 ルイス氏らの研究チームは6月、グレイシャー・ベアの謎に迫る新たな研究成果を学術誌「エコロジー・アンド・レボリューション」に発表した。このクマがなぜこれほど珍しいのかについて新たなヒントが得られたほか、気候変動に伴ってこのクマが直面するだろう問題についても明らかにした。

 論文によると、研究チームはグレイシャーベイ国立公園とその周辺でアメリカクロクマの10の個体群を特定。うち4つの個体群にグレイシャー・ベアが含まれていた。それぞれのグレイシャー・ベアが暮らす地域は、フィヨルドや山、氷原などによって互いに隔てられており、たとえばその一つであるヤクタット地域は、いちばん近いグレイシャーベイ・ウエスト地域から100キロ以上も離れている。

グレイシャー・ベアの捕獲地と体毛サンプル採取地
(Source: Lewis et al., Ecology and Evolution, 27 June 2020)

「クマは氷原を横断したり、フィヨルドを泳いで渡ったりすることもあります」と、ルイス氏は言う。しかし、一般にこうした地形は「島のような機能を果たし、それぞれの個体群は遺伝的に他のグループと異なってきます」。グレイシャー・ベアは、アラスカ州南東部と、隣接するカナダ、ブリティッシュ・コロンビア州の一部地域にしか生息していない。

 だが、ルイス氏がなにより驚いたのは、この地域でもっとも起伏がないチルカット半島のような場所にグレイシャー・ベアが生息しておらず、この地域をまたいだ移動もしていなかったことだ。

次ページ:毛色違いのクマ

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