畏敬の念や恐怖を抱いたり、魅了されたり。人々は大きな動物に夢中だ。
だから「ディープ・ブルー」と名付けられた全長約6メートルのメスのホホジロザメが、クジラの死骸を食べただけでニュースになるのも無理はない。ディープ・ブルーは、これまでに撮影されたどのホホジロザメよりも大きい。(参考記事:「【動画】最大級のホホジロザメ、クジラを食べる」)
同じ理由で世界にその名が知られているイリエワニが「ロロン」だ。ロロンはディープ・ブルーよりさらに大きく、全長6メートル17センチもあった。ギネス世界記録にも認定されたが、残念ながら2013年に生涯を終えた。(参考記事:「世界最大のワニ死亡、フィリピン」)
米ナショナル ジオグラフィック(TV)は近く、科学者たちがフランス領ポリネシアで「カマカイ」という名のメスのイタチザメを捜索した様子を放映する。映像が残るイタチザメの中では、カマカイは最大級の個体と考えられている。(日本のナショジオ(TV)では2020年8月に番組「シャーク:牙を剥く狂気」や「イタチザメ 知られざる夜の素顔」を放送予定)
しかし、こうした巨大な動物たちはセンセーショナルなだけではなく、科学的な教訓をいくつも与えてくれると、専門家は口をそろえる。
「大きなサメのニュースをただ伝えるだけのことに価値はあるのでしょうか? 答えはノーです」と、非営利団体「OCEARCH」の創設者兼会長クリス・フィッシャー氏は話す。OCEARCHはサメのデータ収集を専門とする組織で、世界最大級のホホジロザメにタグを付けて追跡している。(参考記事:「第2回 オーストラリアのサメ調査は1勝2敗」)
こうした巨大な動物を安全に捕獲し、試料を採取し、タグを付け、生息地に戻せば、科学に役立てることができると、フィッシャー氏は話す。例えば、ディープ・ブルーのような巨大なメスを追跡すれば、「ホホジロザメが交尾、妊娠、出産する場所」がわかる。(参考記事:「ホホジロザメの謎を解明、「暖水渦」に長期滞在」)
また、ホホジロザメをはじめ絶滅の危機にさらされている種であれば、こうしたデータを集めることが、種を守り個体数を増やすために極めて重要だと、フィッシャー氏は補足する。(参考記事:「海のハンター ホホジロザメ 有名だけど、謎だらけ」)