氷菓からアイスクリームへ、4000年のあくなき探求の物語

現代の冷凍技術なしに人々はどうやって冷たいスイーツを楽しんだのか

2020.08.02
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 一部の都市では、氷の取引が当局によって規制され、価格や違法売買の罰則が設けられた。1807年のナポリには、43人の「氷売り」がいたという。規制によって、氷は夏季にのみ販売が可能だった。

<span style="font-size:17px">「街中のソルベット」</span>ナポリの街頭でソルベを売る商人、19世紀の絵画より。
「街中のソルベット」ナポリの街頭でソルベを売る商人、19世紀の絵画より。
ナポリの街頭で「ソルベット」を売る人々は「ソルベティエラ」と呼ばれた。18世紀から19世紀にかけて、裕福な人々はソルベをカフェで楽しんだが、庶民は街角で購入した。ナポリを旅した人々の多くが、この街について書く時にソルベットについて触れている。バイロン卿の伝記を著したブレッシントン伯爵夫人、マーガレット・ガーディナーは、1839年にこう記している。「ナポリの夜の街の陽気さと言ったらない……。アイスショップは上流社会の人々で込み合い、街頭にあるより質素な移動式の店には、ソルベットとレモネードを求める人々が集っている」(BRIDGEMAN/ACI)
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氷菓を作る「自然の魔法」

 乳製品を冷菓に取り入れるようになったのがいつなのか、はっきりとはわかっていない。一部の歴史家は、アジアで発展して、マルコポーロによって西洋に持ちこまれたと考えているが、それはまったくの作り話だとして、強固に反論する人々もいる。

 乳とクリームをしっかり混ぜて滑らかに凍らせるために、吸熱反応が利用された。コックたちはアイスクリームの材料を金属製の容器に入れ、さらにそれを氷と塩、あるいは硝石の入ったバケツに入れた。塩は氷の融点を下げるので、氷が解けやすくなる。氷は解ける際に周囲から熱エネルギーを吸収するので、アイスクリームの材料から熱を奪い、その結果、冷えて固まるのだ。

 1550年にはローマ在住のスペイン人医師ブラス・デ・ヴィラフランカが、この吸熱反応を利用した技術がヨーロッパで用いられていることを論文に著している。この技術はイタリア中に広まっていき、1558年にはナポリ人ジャンバティスタ・デラ・ポルタが『Magia naturalis(自然の魔法)』の中でこう書いている。

「パーティーで最初にしたいことと言えば、氷のように冷えたワインを飲むことでしょう。特に夏は。なので、ただ冷やすだけでなく、すすらないと飲めないほどに凍らせる方法を教えましょう。ワインをジャーに注ぎ、凍りやすいように少し水を足す。それから木製のポットに雪を入れて、硝石を振りかける。その雪の中でジャーの中身をかき混ぜると、徐々に凍っていきます」。このフローズンワインのレシピを元に、イタリア風シャーベット「ソルベット」の作り方が知られるようになった。

 気候と文化があいまって、ソルベットはヨーロッパのどこよりもイタリアのナポリで人気を博した。1690年には凍らせる過程で氷をなめらかにした「ソルベッティ」についての初めての本がナポリで出版された。『New and Quick Ways to Make All Kinds of Sorbets With Ease(様々なソルベを簡単に作る早くて新しい方法)』だ。レシピに記載された材料を見る限り、貴族の家庭で読まれていたと考えられる。

 その後、ナポリのスペイン総督の下で働いていたアントニオ・ラティーニによる『The Modern Steward』が1692年から1694年にかけて出版された。料理や邸宅内のマネジメントについて書かれたこの本には、氷についての章が含まれている。

1920年、アイスクリームを楽しむ三つ子。冷凍技術の発明後、アイスクリームはヨーロッパおよび米国で人気が沸騰した。(TRANSCENDENTAL GRAPHICS/GETTY IMAGES)
1920年、アイスクリームを楽しむ三つ子。冷凍技術の発明後、アイスクリームはヨーロッパおよび米国で人気が沸騰した。(TRANSCENDENTAL GRAPHICS/GETTY IMAGES)
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